チョコレートを食べている彼女の顔は、僕達が知っているそれとは全く別物でした。
生気が感じられないのに目だけがギョロっとしていて、昔見たホラー映画みたいだった。
言葉ともうめき声とも取れないような音を発しながらチョコレートを食べる彼女。

Tさん以外、そこにいた全員があまりの出来事に固まってしまっていた。

「そこの先に僕の車があるから、トランクの中のバッグを持ってきてくれ」
車のキーを投げながらTさんが叫んだ。

何が起こってるのか分からなくて咄嗟に反応できない。

「何してるんだ! 早く!ASAPだ!!」

そう言われてようやく我に返った僕はTさんが指差す方向に走った。
何度も転びそうになりながら必死で走って、暗がりの先にそれらしきワゴン車を見つける。
急いで後ろのハッチを開けた途端、叫び声が聞こえた。
車の中から。

裸の男女がいた。