島さんの隣には、寿仁君が緊張して座っている。

「学校では一番うるさくて、人気者らしいですよ」。
島さんが、寿仁君の左頬に張られている絆創膏をみながら、おかしそうに言う。
サッカーの傷口に、毎朝、島さんが張り替えている絆創膏だ。

「きょうテストを『机の中に置いてきた』って。持ってこないんですよね、『見せる人がいない』って」

島さんも、寿仁君、これからの人生の厳しさは覚悟している。島さん自身、自分で店を開くために苦心する日々だ。

「いつかは、僕から離れなきゃいけない。それまでは必死になって応援しようと思って。
勤行だって、あえて一人でさせるんです。僕の後ろについてやるより、一人で考えることもあるだろうと思って」

寿仁君にも聞いてみる。

-勤行の時には何を祈っているの?
「創価中学に行けますようにって」

-創価中学に行った後、何になりたいの?
「弁護士になる」

-何でなりたいの?
「僕、助けられたり、いっぱいしたから、今度は助けたいとと思って」

その時、寿仁君の頬を見つめていた島さんの目が、じわっと潤んだ。