2017年10月19日 SankeiBiz
 訪日外国人旅行者の旅行消費額が年間4兆円を超えるペースで推移している。訪日リピーターほど観光や買い物、食事などにお金をかける傾向がある。観光関連業界は都心部でも割安に料金が設定できる宿泊特化型ホテルの開発を加速しており、変化する訪日客需要への対応を図る。

 「ターゲットは夜に六本木や西麻布で遊ぶ訪日客。外国人比率は40〜50%を目指す」。高級カプセルホテル「ファーストキャビン西麻布」(東京都港区)を17日開業したファーストキャビンの東智隆副社長は手応えを口にする。

 ファーストキャビンは一般のホテルよりコンパクトな間取りながら、手頃な価格と上質感を武器に既存施設の稼働率は9割を誇る。外国人比率は3割程度だったが、西麻布では日本の夜を楽しむ訪日客の需要を取り込めると判断。接客担当に外国人を配置する。

 観光庁が18日発表した訪日外国人消費動向調査によると、7〜9月期の訪日外国人旅行者による買い物などの旅行消費額(速報値)は、前年同期比26.7%増の1兆2305億円となった。3四半期での累計は3兆2761億円と初めて3兆円を突破し、年間4兆円を超えるペースだ。

 日本政府観光局(JNTO)が同日発表した1〜9月の訪日客数の累計は、前年同期比17.9%増の2119万6400人。9月の訪日客数は前年同月比18.9%増の推計228万100人で、9月として最多だった。

 訪日消費を牽引(けんいん)するのは、中国を含む東アジアや東南アジアからの訪日客だ。中国人客の「爆買い」は沈静化したが、百貨店や免税店が個人向け商品を充実させるといった対応が功を奏したとみられる。旅行大手は「観光に便利な都心部に手頃な価格で宿泊する需要が高まっている」と分析する。

 こうした「安・近」需要に応えようと、関係業界は都心部で宿泊特化型のホテル開発を強化させている。京急電鉄は「京急EXイン」を東京・秋葉原など首都圏12カ所に展開、25日には羽田空港近くにも開業する。エイチ・アイ・エスも来年にかけてロボットを活用した「変なホテル」を都内6カ所などに開業させる。

 迎え撃つシティホテル側も手をこまねいてばかりではない。

 京王プラザホテルと京王電鉄は訪日客の多い京都と札幌に宿泊特化型の「プレリアホテル」事業に着手した。プリンスホテルも6月、1室当たり1万円前後の新ブランド「プリンススマートイン」の開発を発表した。2019年度の第1号開業を目指して「立地を検討中」という。(佐久間修志、日野稚子)

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