仮想通貨、まだ「通貨」と認められぬが 渡辺元財務官 2017/10/5

通貨のプロはどう見ているのか。2004〜07年まで財務官、その後は16年6月まで国際協力銀行(JBIC)総裁を務めた渡辺博史・国際通貨研究所理事長に聞いた。

「先進国でも、誰もが利用可能なネットワークの『クラウド』に暗号化したデータを分散保管する仮想通貨の中核技術である『ブロックチェーン』の技術を応用できれば、個々のサーバーでデータを管理する必要がなくなり、金融機関のコスト削減に寄与しそうだ。
三菱UFJフィナンシャル・グループが発行を計画している『MUFGコイン』のように円との交換比率が固定され、安定性を高める仕組みの仮想通貨には期待を持っている」

「とはいえ、それはかなり先の話だ。最近の仮想通貨ブームを見ていると、日本や欧米のような送金手段が確立されている先進国の人々が投機取引に先走り、混乱を助長している印象が否めない。
仮想通貨の取引を承認するマイナー間のいざこざによって起きた8月のビットコイン分裂騒動のようなドタバタ劇がこの先も繰り返されれば、使う側の利便性を損ないかねない」

「国内大手行で海外送金の手数料が1回あたり4000円もかかるのは高すぎる。通貨として機能を満たさない仮想通貨が先進国において取って代われるとは想定できないが、既存の送金システムを考え直すきっかけを与えてくれた点で評価したい」

「ブロックチェーンの技術的なメリットは大きい。活用法も仮想通貨の枠内にとどまらない。半面、チェーンが仮想通貨の広がりについていけなくなったり、採掘までのプロセスの複雑化でマイナーの人件費が高騰したりする事態はそう遠くない時期に訪れるだろう。
今後は仮想通貨の普及とブロックチェーンの活用方法は完全に分けて議論すべきではないか」

https://style.nikkei.com/article/DGXLASFL20H29_Q7A920C1000000?channel=DF130120166036