重大事故につながる高速道の「落とし物」
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■中国自動車道でタイヤ接触で3人死傷事故

 高速道路上の「落とし物」が2人の命を奪った。岡山県津山市の中国自動車道で18日、トラックから落ちたとみられるスペアタイヤに軽乗用車とトレーラーが接触した3人死傷事故。高速道路の落とし物は実は全国で年間36万件に上る。90秒に1件の計算だ。万が一、落とし物に接触したら……。【和田浩幸】

 落下物の恐ろしさは、誰もが被害者となり、一歩間違えれば加害者にもなることだ。

 岡山県警高速隊によると、落ちたタイヤは直径1メートル、厚さ30センチで重さ90キロ。上り(2車線)の追い越し車線を走っていた軽乗用車がこれに乗り上げ、走行不能となった。

 乗っていた広島市安芸区の歯科技工士、中村美香さん(49)と長女で岡山市北区の大学生、亜美さん(21)は車から避難したが、後続の20トントレーラーもタイヤに接触して横転し、2人をはねた。中村さんは即死。亜美さんも病院で死亡した。トレーラーの運転手も軽傷を負った。

 高速道路を管理する全国6社に取材したところ、落下物の件数は毎年ほぼ同じで直近の2015年度は計約36万3000件。1日当たり995件だ。90秒に1件の割合で、全国のどこかで車から何かが落ちている。

 中国自動車道を管轄する西日本高速道路は13万1000件で6社中最多だ。内訳は▽プラスチックやビニール、布類33%▽タイヤなど自動車部品類11%▽積み荷のベニヤ板など木材類10%−−など。

 本州四国連絡高速道路の担当者は「高速では風の抵抗でトラックの荷台や乗用車の屋根にくくり付けた物が落ちやすい」と話す。通行量の多い東名高速を抱える中日本高速道路も「巡回や監視カメラで落下物の把握に努めているが、回収までに1時間かかることもある」という。各社は出発前の荷物固定の徹底やサービスエリア(SA)での点検を呼びかけるが効果はない。

 落下物に接触した場合にどうすべきか。

 自走可能ならSAや料金所まで行き係員に伝えるか、道路緊急ダイヤル「#9910」や110番で通報する。自走が無理ならハザードランプや発炎筒などで後続車に事故を知らせ、事故車や落下物より手前のガードレールの外側に避難し、通報する必要がある。

 中国自動車道で亡くなった中村さん親子は110番の最中だったとみられるが、事故直前にいた正確な場所は特定できていない。今回の事故では仮にガードレールの外側に避難していたとしても、落下物のタイヤに対しどの位置にいたかが重要だった。タイヤより十分に手前なら無事だった可能性もある。

 高速道路会社の関係者は「やり切れない事故だ。結局、道路に物を落とさないことに尽きる。落とし主は最悪の場合、人を傷つけるだけでなく自分の人生も台無しにする」と警鐘を鳴らしている。

配信2017年10月29日 09時00分
毎日新聞
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