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■廣江弁護士の見解

 一般的には、判例上「使用者が、その事業の執行につきなされた被用者の加害行為により、使用者としての損害賠償責任を負担したことに基づき損害を被った場合には、使用者は、その事業の性格、規模、施設の状況、被用者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防もしくは損害の分散についての使用者の配慮の程度、その他諸般の事情に照らし、
損害の公平な分担という見地から、信義則上相当と認められる限度において、被用者に対し、前記損害の賠償または、求償の請求ができるものと解される」(最高裁判所昭和51年7月8日判決)という枠組みが採用されており、結論的には、犯罪行為や故意の不法行為を除くと、労働者の損害賠償義務を否定するか、5〜10パーセント程度に限定したり、重過失がある場合でも、4分の1〜2分の1程度に限定しています。

 詳細は割愛しますが、アートコーポレーションの引越事業に関する事実関係をこの判例の枠組みに沿って検討すれば、引越作業員の損害賠償義務は、否定されるか、又は、否定されないにしても、かなり限定されるべきという結論に至ると考えられます。

 アートコーポレーションの引越事故賠償金を巡っては、今月10日にも元従業員が天引きされた賠償金などの返還を求め横浜地裁に提訴したことが報じられており、トラブルが相次いでいます。

おわり