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11月7日 18時29分

発言の一つ一つに注目が集まるアメリカのトランプ大統領が、就任後初の訪日を終えました。印象に残ったのは、「過激な言葉」ではなくて、数々の手厚いもてなしと両首脳の蜜月ぶり。これをどう見ればいいのか、3人の専門家に聞きました。(ネットワーク報道部記者 郡義之)

“ワンマン社長への接待”

最初に話を聞いたのが、ビジネスと接待の関係に詳しく、みずからもコンサルティング会社を経営する、立教大学大学院の冨田賢教授。

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冨田教授は初日に行われたゴルフに注目していました。ゴルフはトランプ大統領の大好きなスポーツ。安倍総理大臣みずからカートを運転したり、トランプ大統領とハイタッチしたりして、懇親を深めました。


この様子について冨田教授は「まさに、たたき上げのワンマン社長に対する典型的な人づきあいのしかた」と指摘。

そのうえで「こうしたタイプの社長さんは好き嫌いがはっきりしていることが多い。安倍総理大臣はトランプ大統領のやりたいことを研究して、それに合わせたのではないか。好みを尊重してよい気分になってもらうことこそ、物事をうまく運ぶコツ」と言います。

また今回のゴルフについては、ネット上でも「北朝鮮情勢が緊迫している中で、ゴルフに興じるとは何事か」と批判する声もありましたが、冨田教授は「限られた時間の中で、互いの蜜月ぶりをアピールしたかったのでは」と分析しています。

カウンターで距離もぐっと

一方、ビジネスマナーなどの講師をしている山木理代さんが注目したのは、初日の夕食会です。

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安倍総理大臣は、トランプ大統領夫妻を東京・銀座の高級レストランに招き、鉄板焼きを楽しみました。

もちろんステーキはトランプ大統領の好物。メラニア夫人とともに、和牛ステーキを味わいました。ここまではもてなしの王道。

山本さんが強調するのが安倍総理大臣とトランプ大統領の座り位置。店内では向かい合わせではなく、カウンターで横並びで座っていました。

「向かい合わせに座るのは、心理的には敵対関係を象徴しますので、隣どうしで座ることで、互いの距離感を縮めやすく、話もしやすいんです」
大統領 “始まり”を語る
2人の関係については、今回、トランプ大統領自身が晩さん会でその始まりを語りました。

「各国首脳から大統領選挙に勝利したことへのお祝いの電話をもらうなか、安倍総理大臣は、『なるべく早く会いたい』と言ってきた。本当に積極的でタフな人物だが、そこがいいところだ。私は大統領に就任してから会うつもりだったのだが、彼はもうニューヨーク行きの飛行機に乗っていたんだ。そして、安倍総理大臣は、見たことのないような美しい金色のゴルフクラブをプレゼントしてくれた」

ものが言える存在になれるか

世界からも注目される間柄は、政治や外交の世界でどう生かされるのか。

続いて訪ねたのは、フランス公使も勤めた元外交官で、東京外国語大学の山田文比古教授。2000年の九州・沖縄サミットでは事務局長として、外国首脳のもてなしに尽力した1人です。

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山田教授はまず、トランプ大統領にとって安倍総理大臣が「頼りになる存在」と映っていると見ることができると言います。

トランプ大統領の国内支持率は40%前後と歴代大統領の中でも低く、過激な言動からヨーロッパなど諸外国とも距離を置いたままです。

「孤立気味のトランプ大統領が間違った方向に行きそうになった時に、安倍総理大臣がちゃんとものが言えることができれば、2人の関係が生きたということが言える」と話しています。

一方で、「蜜月ぶりを強調しすぎると、トランプ政権が危うくなった場合に共倒れする可能性がある」と指摘。今の関係がうまくいくかどうか「長い目で見たほうがいい」と話していました。

トランプ大統領の訪日中も、世界ではさまざまな問題が起きました。地球温暖化対策を話し合う国際会議では「パリ協定」からのアメリカ離脱に懸念する声。北朝鮮との緊張関係も続いています。尽きない難題に、親密な関係をいかしてどのような成果を出していくのか、真価が問われるのはこれからです。