日銀総裁「保有国債の時価、21兆円減少」 長期金利1%上昇で 2016/2/24
https://www.nikkei.com/article/DGXLASDF24H0W_U6A220C1EE8000/

財務省試算の衝撃!「1%の金利上昇で日本経済にダメージ」の意味
http://www.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/129957/102700088/

日銀の国債含み損、年内に10兆円超 検査院が懸念  :日本経済新聞 2016/11/13
https://www.nikkei.com/article/DGXLZO09484460S6A111C1NN1000/


異次元緩和の先に、日銀が「巨額債務超過」に陥る可能性 2017.06.28

日本銀行が現在行っている金融緩和政策からの脱却が議論されるようになった。
緩和政策からの脱却に当たっては、損失が発生することが予想され、これが障害になるという指摘がなされている。

現在、金利は日銀によって抑制されているが、金融緩和政策が終了すれば上昇する。
金利と国債市場価格は逆比例の関係があるので、金利上昇は、国債市場価格の下落を意味する。

日銀の黒田東彦総裁は、5月10日の衆議院財務金融委員会で、民進党の前原誠司氏の質問に答えて、
「長期金利が1%上昇した場合、日銀が保有する国債の評価損が23兆円程度に達する」とした。金利上昇幅が2%であれば、46兆円ということになる。

仮に日銀の目標どおりに消費者物価上昇率が2%になった場合には、短期金利も2%以上になるだろう。
長期金利はそれより高くなるので、3%程度になる可能性が十分ある。仮に3%だとすれば、日銀保有国債の市場価格下落幅は69兆円になる。

ただし、以上で述べたのは、保有国債の価格下落だ。実際に売却すれば現実の損失となるが、国債を保有し続ければ含み損に留まる。
なお、保有国債を売却すれば、市場に売り圧力が加わり、国債市場価格はさらに下落する可能性が高い。したがって、損失がこの値よりも拡大する可能性もある。

そこで、日銀は「満期落ち」、つまり償還されるまで国債を保有し続けることになる可能性が高い。
ただし、そうであっても、損失を免れるわけではない。第一に、日銀当座預金に金利をつける必要がある。
先に、金利が上昇しないと、実質金利がマイナスになると述べた。物価が上昇している局面で実質金利がマイナスになると、土地などに対する投機を引き起こしてしまう。
だから、短期金利も最低2%程度に引き上げる必要がある。

短期金利を2%にするためには、現在のマイナス金利を解除するだけでなく、超過準備に対して最低2%の金利をつける必要がある。
なぜなら、金利が低いままだと、当座預金が取り崩されて貸し出しに回されてしまい、投機資金を供給することになるからだ。

そこで、当座預金への付利を2%にしたとしよう。他方で、保有国債の利回りは不変だ。
日銀の16年度決算によれば、保有長期国債の運用利回りは、0・38%だ。だから、1・62 %だけ逆ザヤになってしまう。
これに当座預金残高約340兆円をかけると、年間約5・5兆円の赤字となる。

この場合、時間が経つにつれて 償還が進み、国債残高が減り、当座預金残高も減少する。
この過程で先に述べた当座預金金利と保有国債利回りの逆ザヤが発生する。
いま簡単化のため、国債は平均である7年で一挙に償還されるとしよう。すると、逆ザヤの総額は5・5兆円×7年=38兆円となる。

しかし、損失はこれでとどまらない。なぜなら、国債の償還期限まで保有しても、購入時の価格が額面より高い国債があり、その差額が損失として発生するからだ。

「日本銀行が保有する国債の銘柄別残高」という統計には、額面ベースの数字がある。この額は、380兆円だ。
それに対して、「営業毎旬報告」には、簿価が記載されている。この額は、390兆円だ。両者の差は10兆円だ。
だから、償還まで保有すると10兆円の損失が発生する。これは、確実に発生する損失だ。

実は、この差は2013末では2・7兆円に過ぎなかった。追加緩和が実施された後の15年末でも5・9兆円だった。
マイナス金利の導入後に、額面を上回る購入が増えて急拡大したのだ。

この額を先に計算した付利総額38兆円に加えれば、合計は約48兆円となる。これは、上で述べた現時点で一挙に売却する場合の損失と同程度の額。

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52097