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[東京 9日 ロイター] - 日本の景気は、「いざなぎ景気」を超えて約5年間の拡大が続いている。だが「中身」には、成長率、消費、設備投資の伸びに「青年」と「高齢者」ほどの開きがあり、内閣府からも今回は「横ばい景気」との指摘がある。人口減少問題が解消しなければ、近い将来の成長打ち止め感は強まるばかりだ。

「いざなぎ超えとはいっても、今回の景気は悪くなっていないという程度」──。内閣府幹部からは、景気拡大期間が長期化したことへの高揚感はほとんどない。むしろ、アベノミクスが目指す企業部門から家計部門への好循環には、いまだ至っていないと指摘。中身では、「いざなぎ」よりかなり見劣りするとみている。

景気拡大期間は、政府が9月分の「景気動向指数」を8日に公表し、同指数(CI)による景気の基調判断を「改善」と判断したことにより、2012年11月の「景気の谷」以降58カ月間となった。

戦後最も長い拡大期間は、2002年1月から08年2月までのいわゆる「いざなみ景気」の73カ月、続いて1965年10月から70年7月までの57カ月の「いざなぎ景気」。今回の58カ月間は「いざなぎ」を超えたということになる。

しかし、実質成長率で比較すれば、過去2回とは相当見劣りする。高度成長期にあたる「いざなぎ景気」では5─13%程度、2000年代の「いざなみ景気」では2%弱の成長が続いた。 今回の拡大期間は、13年こそ円安の恩恵で2.6%成長となったものの、その後は消費税引き上げでマイナス成長、直近2年間は1.3%成長にとどまっている。

その根本原因をたどれば、人口減少問題が企業や家計の行動に影響していることは明らかだ。

アベノミクス下ですすんだ円安を起点に、輸出と企業収益の拡大が実現し、雇用者増までは実現できた。

しかし、非正規労働者の賃金底上げは実現しつつあるものの、人口減少による国内市場の縮小が企業の視野にあり、正規労働者の1人当たりの賃金の伸びは鈍い。

「人手不足とはいえ、企業にとって賃上げには、成長期待が重要な要素。期待ができないのに正社員の賃上げで固定費が上昇することには消極的だ」(野村総研・エグゼクティブエコノミスト・木内登英氏)との指摘がある。

少子高齢化に伴う社会保険料の増大も、勤労者世帯の家計の財布のひもを固くしている。株価が上昇しているとはいえ、恩恵は株式投資を行う余裕のある富裕層にとどまる。

中間層の所得はこの間、社会保険料の重圧だけがのしかかかり、経済全体で消費は振るわない状態だ。

民間消費は、「いざなぎ景気」時の毎年度13─15%の高い伸びに比べ、足元では0%台にとどまっている。

さらに市場規模の縮小は、国内設備投資の委縮を招いている。2000年代の景気拡大期には4─5%の伸びを示していた設備投資だが、今回は2%台。

内閣府幹部によれば、人手不足の割に伸びが鈍いのは、省力化投資が緩やかに伸びているものの、産業機械メーカによる価格競争で、ロボットや運搬機械などの価格が低下傾向にあるため、全体として投資金額がさほど伸びないといった事情もあるという。
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2017年11月9日 / 08:31 / 3日前