いくらでも借金できて税率でインフレを操る根拠になってるのはこれか。



「シムズ理論」が成功しても庶民だけが損をする理由 | ダイヤモンド・オンライン
2017.4.10
増税せずに債務減「シムズ理論」とは?

財政拡大を正当化するシムズ理論が話題だ。
よくよく聞くと、政府には都合がいいが、庶民は犠牲を強いられる理論のようだ。
たとえば、借金をしたいだけして、楽に返すことができる。そんなうまい話があれば誰でも飛び付くだろう。
通常は、そんな話は存在しないのだが、今の政府の中にはうまい話が存在すると思っている人もいるようだ。

シムズ理論に基づいて、財政再建のメカニズムを説明してみよう。

まず、政府が物価上昇率の目標達成(日本では2%)までは増税しないと宣言する。その上で減税を行い、公共事業などを増やして財政を拡大する。
所得が増えた国民や企業が、消費や投資を増やす。ここで肝心なことは、増税をしないという政府の宣言を国民や企業が「信じる」ことである。

消費や投資が増えれば、需要が増えるので物価が上昇する。物価が上昇すれば、通常であれば賃金も増加する。
インフレが進行して金利が上昇すればいずれは利払いの負担が増えるが、政府の借金の元本自体は即座には増えない。
それどころか、2倍になった物価水準から見た借金の実質的価値は2分の1になる。一方、増税をしなくても税収は増加する。

シムズ理論のもくろみ通りにいけば、現在の日本の政策当局にとっては願ったりかなったりである。
異次元緩和によるデフレ脱却に行き詰まっていただけになおさらだ。

特に、昨年11月に内閣官房参与の浜田宏一氏がシムズ理論を聞いて「目からうろこが落ち、考えを変えた」と発言して以降、急速に日本での注目度が高まっている。
ただ、日本以外の国では、ほとんど注目されていない。裏返せば、今の日本にとってそれだけ都合のいい理論なのだといえる。

では、シムズ理論は日本において効果を発揮できるのだろうか。冷静に見ていくと、発揮できない可能性の方が高い。
なぜなら、日本の場合、政府の「増税しない」との宣言を国民が信用したとしても、それ以外の要因が働いて消費を増やさない公算が大きいからだ。

その一因が社会保障。若年層を中心に、老後の生活設計に見合った額の年金を受け取ることができないという不安が根強い。
それ故、所得が増加しても消費に回さず貯蓄される可能性が高い。

消費が増えなければ物価は上昇しない。物価上昇率目標が達成できないのでずっと財政支出の拡大が続き、財政赤字が膨らみ債務残高が積み上がることになる。
しかし、無制限に債務残高を積み上げることはできない。

たとえ首尾よくシムズ理論のもくろみ通りに物価が上昇したとしても、多くの庶民は損をするだけになる。
というのも、物価が上昇することで、庶民の預金や貯金の額が目減りするからだ。

政府が抱える借金の負担が軽くなるのと正反対である。
加えて、先ほど触れたように、所得税の支払額が増える。庶民にとっては踏んだり蹴ったりだ。

http://diamond.jp/articles/-/124074