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石橋さんは「打ち消しのコメントを出しても、全然別のところに転載されたりして、1つを消したと思ったら、ほかのところで10個ぐらい広がっているような感じでした。家族にも心の傷が残り、いろんな人に心配をかけてしまった。なぜ、こんなことをする人がいるのか理解できない」と怒りを込めて話していました。

■まとめサイトの存在

誤った情報が引き起こした今回のバッシング。 デマが拡散していく状況を調べると、その要因の1つとして、「まとめサイト」の存在がわかってきました。

まとめサイトとは、ニュースやさまざまな話題をピックアップして、まとめた記事を載せたサイトです。

情報源はさまざまで、新聞社などと契約して記事を載せているサイトもあれば、ツイッターや掲示板などの内容を引用する形で掲載しているサイトもあります。

運営者も企業や個人などさまざまですが、中には、月間のページビューが億単位に上り、拡散力、影響力ともに極めて大きいサイトもあります。

今回の件では、「モノローグ」というまとめサイトが10月11日、容疑者が石橋さんの会社に勤務しているという記事を掲載していました。
https://www3.nhk.or.jp/news/web_tokushu/still/web_tokushu_2017_1111_img_04.jpg

この記事自体は、ツイッターや掲示板にすでに書かれている内容をまとめたものでしたが、そのなかには会社の地図や写真までもが掲載されていたため、さらに被害が拡大したと見られています。

■まとめサイト 問われるメディアとしての姿勢

今回のデマの記事を掲載していた「モノローグ」というサイトに取材を試みましたが、サイトはすでに閉鎖されていました。

まとめサイトはどうやって作られているのか。

月間のページビューが1億4000万に上ると言う、大手まとめサイトの「オレ的ゲーム速報@刃」の管理人に話しを聞くことができました。このサイトでは、ゲームやニュースなど幅広いジャンルを扱い、1日に30〜40本ほどの記事を配信しています。

ネタを選んで記事に仕立て上げ、サイトに載せる作業を担っているのは、管理人のほかに10人ほど。
ネタはツイッターを中心に話題になっているものを探し、それに対するネット上の反応やサイト側のコメントをつけて完成させます。
1つの記事を作るのは早いものでわずか5分ほど。

収入は、サイトに載せた広告がクリックされた数や、広告を通して商品を購入した数に応じて得られる仕組みです。当然、アクセスが多いほど、収入が増える可能性が高くなります。

管理人のJin115(ハンドルネーム)さんに、デマや不確かな情報が、サイトを通じて広がる可能性について聞くと、そうならないように心がけていると、次のように話しました。

「話題だけが先行しているような場合は、うそのニュースの可能性がある。サイトは信頼が重要なので、そういったものにだまされないように気をつけている。ニュースソースが信頼できるかどうかが重要だ。それでも過去には間違った情報を掲載してしまったことがあるが、そうした場合は、すぐに訂正しておわびをしている」。

一方で、今回の記事を11日に掲載すると、このまとめサイトについて、「非常に扇情的で偏向した投稿が多い」「意図的にPVを稼いでいる」「悪質なまとめサイトだ」など、数多くの批判がNHKに寄せられています。取材班では、こうしたまとめサイトの実態を知るために、記事の作り方や収益の仕組みなどを取材し、「デマ情報を拡散している」という指摘についても管理人に質しました。

■ネットメディアの責任は

ネット炎上の問題に詳しい国際大学の山口真一講師は、こうしたまとめサイトを含むネットメディアが、炎上の拡大に与える影響は非常に大きいと指摘します。

「まとめサイトのなかには月間1億ページビューを超すようなところもあり、情報を拡散するという点において、これほど大きな威力を持つサイトはあまりない。こうしたサイトが、ある出来事に批判的な意見を集めると、それを見た人は、みながそういう見方をしているなら、自分もバッシングしていいんだと考えてしまう。管理者側は多くの人に影響を与えるメディアだと自覚するべきで、最低限、情報が真実かどうかを検証することは必要だ」と話しています。

続く