――そうなると今後、日本の二大政党制は成り立たないものなのでしょうか。右派とリベラルの対抗軸、自民と民主が戦ったような状況にはなり得ないと?

 あれは一時的にそういう状況になりましたが、じり貧になる過程の話だろう。
他の国でもリベラルの衰退は起きていて、労働者の雇用とかということを掲げる自国第一主義を掲げる政党が大きな潮流を形成し始めています。
構造は日本と同じ。労働組合が腐ってしまい、自分たちの支持基盤が……。
LGBTとかももちろん大切だとは思いますが、自分たちと切り離された市民運動の領域、ある種エリートの領域に支持基盤を求めていく限り、具体的に生活が崩壊していくとか、そういう人たちが誰に頼って生きていくのでしょうか。
そういうことを考えたら、やはり国家主義とか、そういうものが代替していく。今までの自民党は国家主義をあまり出しすぎないようにしていました。2000年の前までは。
そのあたりを自民党が押していくようになってきたのがこの15年間くらいの歴史です。

 ――保守と革新。そもそも今の自民党は思想的には右派、保守。政策的には本来革新政党がやるべきものをやって支持を集めているように思います。

 まさしくその通り。日本は労働運動がめちゃくちゃ強かったという歴史が60年代にあるので、都市では社会党に勝てなかった。農家とか農協とか地主が自民党員だったりして。「具体的な信頼」を作っていったというのが自民党の強さだったと思います。

 ――土着的な部分?

 そうですね。だからこそ自民党が都市から農村への再分配策とか、社会党に負けない社会保障政策とか。自民党は結構、積極的に打ち出していきましたよね。

 ――60、70年代はそうだと思いますが、80年代は保守への回帰が起きました。その後左に戻って、小泉政権で更に新自由主義という形で保守に戻って、その後また戻ってきたという印象。自民党も揺れ動いてきた印象があります。

 それは踏み込んで、雇用を破壊して、柔軟な雇用を作り出して、労働者からの搾取を強める。当然労働者からの人気は落ちるので、ある程度揺れ戻しながらバランスをとって政権を担ってきた。

 ――本来は揺り戻しと言うのは政権交代で起きるもの。米国は共和党と民主党の間で起きます。

 立憲民主党の枝野さんなんかは「30年前だったら、自民党宏池会に自分がいるはずだ」と自分で言っています。
そういう意味では、野党も自民党のような世界観で物事を打ち出して勝負している。となると政権交代をする必要がない。選挙でそれ(政権交代)が起こることはあり得ない。
なぜなら選挙はテストみたいなもので、日常の力関係がそのまま表れるから。資金力がまず要因。何回選挙しようが、安倍政権がどんだけひどいことをやろうが。

 ――一方で小選挙区制度だと逆転が起こり得るのかなと思うのですが再度政権交代はないのでしょうか? やはり民主の失敗が大きすぎたという考えですか?

 そのことを左翼の方も総括していない。だから信頼されていない。そういうことがかなり大きな問題。
自民党が大こけしても代わりに出てくるのが希望の党みたいな(笑)。「別に思想的には大して変わらないよね」という野党が出てくる。