高齢などで自力でごみを出せなくなった「ごみ出し困難世帯」が全国で少なくとも5万世帯ある、という記事を9月に掲載しました。さらなる高齢化で今後も増える見込みですが、支援にはお金や人手が必要です。読者から届いた反響をもとに、各地の解決策を取材しました。

〜中略〜

集積所 中学生が一緒に仕分け

 「高齢者には、ごみの分別も大変です」。認知症の母親(84)と離れて暮らす京都市の女性(55)が送ってくれたメールを、紹介します。

 「結婚して離れて暮らす私と妹が、母が暮らす実家の掃除や片付けに通っています。

 母が住む自治体は、4色のごみ袋を使い分け、8種類にごみを分別するルールです。違うごみが混ざっていると、『収集できません』というシールが貼られ、置いていかれます。

 先日、実家を訪ねると、ポリ袋や発泡スチロールのトレー、ストロー、瓶、缶が、すべてきれいに洗われて乾かされた状態で、大量に出てきました。母は、それぞれをどう分別して捨てて良いかが、わからなかったのです。

 町はごみを正しく分別してもらうために『ごみ分別支援イラスト』というチラシも作っていますが、文字が小さすぎて老眼の私には見えません。認知症の母でなくても、この細かい分別収集は大変ではないかと思います。

 誰もが年をとります。資源の有効活用という趣旨はよくわかりますが、できない人もいることを認識して、もっとゆるやかな収集方法を考えて頂きたいと思った次第です」

 分別が難しい高齢者をどう支援すればいいか。1993年から20種の分別をする熊本県水俣市を訪ねました。

 11月上旬、平日の午後5時。同市の資源ごみの集積所に行くと、アルミ缶、スチール缶、小型家電、電気コード類などに分かれた分別用のコンテナがずらり。横には、自治会役員の他、同市立水俣第二中学の生徒が立っています。

 そこに、ごみ袋を持った高齢女性が。中学生がすぐさま駆け寄り、「これはスチール缶」「これはアルミ缶」と分別していきました。

 同中学では、生徒全員が資源ごみの日に月1回、自宅近くの集積所で分別をお手伝い。学校の方針で、この日は、部活より分別支援が優先。2年生の鶴田純也さん(14)は「部活がしたい時もあったけれど、近所の人とコミュニケーションをとれてうれしい」と話しました。

 同市では、生ごみと可燃ごみも分別が必要。この分別が難しい高齢者らには市が、「分別ご免除シール」を支給します。シールをごみ袋に貼れば、可燃ごみの中に生ごみが混ざっても回収してくれます。

 生ごみの分別を始めた当初、「バナナの皮は生ごみ、皮に貼ってあるシールは可燃ごみに分別を」と市報で伝えると、「高齢者には負担が重い」と市民の批判が相次ぎ、分別ご免除シールを作成。市内約1万2千世帯のうち、69世帯が利用します。

 20分別でリサイクル率が上がったことなどで、ごみの総量は減りました。この結果、91年当時、「残り10年しか持たない」とされた市唯一の埋め立て地は、今年度時点で残り約40年に「延命」。リサイクルの収益は16年度で計約2千万円。市は各自治会に平均約40万円を還元し、自治会は、祭りの費用に充てたり、防犯灯を設置したりしています。

 市環境クリーンセンターの竹下浩久所長は「分別が大変な高齢者もいるが、高齢化と過疎化が深刻な自治体ができることには限りがある。本人、家族、地域、自治体、ホームヘルパーなどが力を合わせる必要がある」と話します。

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