https://jp.reuters.com/article/usa-lead-new-york-idJPKBN1DK08J

2017年11月20日 / 04:39 / 15時間前更新

Joshua Schneyer and M.B. Pell

[ニューヨーク 14日 ロイター] - 公衆衛生関係者の間では、ニューヨーク市は長年に及ぶ鉛中毒との戦いで、よく知られている。鉛は神経障害などを引き起こす可能性がある有害物質だ。

全米で禁止される18年も前の1960年に、同市は住宅における鉛含有塗料の使用を禁止。2004年の市条例では、6年以内に子どもの鉛中毒を「撲滅」するとの目標を掲げた。

また、一般住宅を対象とした鉛検査を無料で実施。危険箇所を改修し、必要とあれば大家を摘発する方針を打ち出している。ニューヨーク市で鉛害にさらされる子どもの割合は、年を追って減少してきた。

しかし、バーバラ・エリスさんが住んでいたブルックリンのアパートでは、娘2人の血中鉛濃度が3年連続で高い数値を示すまで、検査担当者が訪問することはなかった。

このアパートでは、ドアや窓枠のはげかけたペンキから鉛が見つかった。双子の娘たちは発育が遅れ、言語訓練や作業療法を必要とした。発育の遅れは、鉛中毒の子どもによくみられる症状だ。

「娘たちは今でも、言葉が少し不明瞭だ」と、地下鉄運転手のエリスさんは言う。娘のケイトリンちゃんとチェスティちゃんは、6歳になった。大家ともめるのに疲れたエリスさん一家は、ハーレムに新しい住居を見つけて移り住んだ。

この一家が経験した苦難は、珍しいことではない。

ロイターが精査した血液検査データによれば、米国の裕福な大都市には、いまだ高い鉛中毒リスクにさらされた地域が数多くある。

この種の検証としては初となる今回の調査では、ニューヨーク在住の子どもを対象として、地区ごとに細分化された血液検査データをロイターが入手した。各地区の住民は4000人程度で、人口密度の高いニューヨークでは、地区は数ブロックに相当する場合が多い。

多くの地区で鉛中毒は根絶しているが、ロイターは2005年から2015年の11年間に検査を受けた5歳以下の子どもの10%以上から高濃度の鉛が検出された、ニューヨークの69地区を特定した。

米ミシガン州フリントで2014年から15年にかけて水道水の鉛汚染が大きな問題となり、2016年には当時のオバマ大統領が非常事態が宣言される事態となったが、その危機の最中に米疾病予防センター(CDC)の検査で鉛害が検出された子どもの割合は5%だった。

今回の数字はその2倍だ。

危険地区はニューヨーク中に散らばり、さまざまな人種に及んでいる。古いペンキをはがすことは、危険な行為として知られているが、汚染された土壌や水、おもちゃ、化粧品、サプリメント類など、日常の中にも危険が潜んでいることが、ロイターの調べで明らかになった。

鉛中毒に関するニューヨーク市の最新報告書では、2015年に血液検査を受けた子ども5400人から、高濃度とみなされる1デシリットル当たり5マイクログラムかそれ以上の鉛が検出された。800人を以上からは、少なくともその2倍の検出があった。

ロイターは、これまで公表されていなかったデータを精査し、市による「根絶」目標が達成されていない地区を詳細に検証した。

「ニューヨークの鉛対策は有名だ。それでもまだこうした地区が残っていること自体、全米規模での取り組みがいかに困難かを物語っている」と、シカゴの鉛中毒予防対策を主導したパトリック・マクロイ氏は語る。
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