12/6(水) 21:21配信
毎日新聞

 NHKの受信料制度は合憲−−。最高裁が初判断を示した6日、元NHK職員らからは「公共放送として、市民の期待に応えるNHKになってほしい」「司法のお墨付きを得ても、消費者の経済状況を無視した無理な徴収はやめて」と願う声が上がった。一方、契約締結と受信料の支払いを拒んできた被告男性側の弁護団は「通り一遍で予定調和の判決」「旧態依然の受信料方式を許し、大変残念」と批判した。【近松仁太郎、石山絵歩】

 「判決は、NHKに課された責任の重さを突きつけている。それにNHKが応えられているのか」。この日の判決を受け、NHKで約30年間にわたり番組制作に携わった元プロデューサーの永田浩三さん(63)は語った。

 従軍慰安婦を巡るドキュメンタリー番組「問われる戦時性暴力」(2001年放送)で編集長を務め、放送後に市民団体がNHKを訴えた訴訟で、局の幹部が現場に介入した実態を細かく証言した。

 組織に反旗を翻す形になり、09年に早期退職したが「NHKの仕事はすごく面白かった」と振り返る。ドキュメンタリー制作の現場では、先輩から放送法の精神を説かれた。阪神大震災やオウム真理教事件では、NHK記者たちの取材の緻密さに驚いた。

 それだけに、古巣の今に歯がゆさを感じる。6月には加計学園問題で前川喜平・前文部科学事務次官が「最初にインタビューされたのはNHKだが、放送されない」と明かし、政権への配慮があったのではないかと指摘された。永田さんは「今回の判決で、NHKの報道に疑問を持つ人の声まで消えるわけではない。公共放送として、健全な報道を求める世の人に向けて仕事をしてほしい」と後輩に望む。

 受信料の在り方を疑問視する声もある。大阪市のNPO法人「消費者情報ネット」理事長の石原純子さん(73)は「十分な説明もなく、一方的に契約を迫られた」という多くの高齢者から相談を受けた。「合憲判決を盾に、強引な勧誘が増えることが心配。個々の消費者に合わせた適切な説明で理解を得なければ、トラブルはなくならない」と話した。

 今回の判決で敗訴が確定した60代の被告男性側の高池勝彦弁護士は「判決は『国民が受信料で争うことを許さない』と示しただけ」と指摘。林いづみ弁護士は、スマートフォンでテレビ放送が見られるようになっている現状に触れ、「ネット時代にふさわしい受信料の在り方について、国民が声を上げる必要がある」と話した。

 NHK広報局は「主張が認められたと受け止めている。受信料制度の意義を丁寧に説明し、公平負担の徹底に努める」とのコメントを出した。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171206-00000108-mai-soci