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年末の税制改正に向けて増税論議のオンパレードだ。年間千円の税金を徴収する「森林環境税」と呼ぶ増税案が決まる見通しだ。

そのうえ、サラリーマン世帯の給与所得控除の削減やたばこ税の増税までも実施される方向だ。

シンクタンクの分析では平成23年以降、すでに消費税率や社会保険料引き上げなどによって実質可処分所得はじわりと減っている。

増税が実行されれば、家計の負担がまた増える。税金は取りやすそうなところから取るのは、いつの世も変わらないようだ。

ふと気がつけば…数十万円の稼ぎが

東日本大震災があった平成23年以降、政権交代も起きたが、家計の税負担については、税制上の特例や補助金などの措置を講じながらも徐々に増える仕組みが整っていたようだ。

シンクタンクの大和総研は10月、23年から32年までの9年間の主な制度改正による家計の実質可処分所得への影響試算を公表した。

実質可処分所得は、給与から所得税と社会保険料などを差し引いたうえ、児童手当を加えて計算した。実質可処分所得の減少は、自由に使えるお金の目減りを意味し、生活の余裕が狭まることになる。

23年以降、子ども手当が縮小されたほか、16歳未満の扶養親族に適用された住民税の年少扶養控除も廃止。年収960万円以上の世帯には児童手当の所得制限が加わり、支給額が減額されている。

26年に消費税率が5%から8%にアップし、予定通りなら31年10月に10%に上がる。

大和総研の是枝俊吾研究員の試算によると、妻が専業主婦で子供2人(中学生以下、3歳以上)がいる「片働き4人世帯」で年収500万円のモデルケースでは、23年に比べて30年には、可処分所得が約30万円ダウン。

434万2300円あった可処分所得は403万9900円に減る。

年収1千万円だと、児童手当の所得制限もひびいて、可処分所得は767万8300円から711万2100円とマイナス約56万円。1500万円になると、93万円も可処分所得が減り、1082万4900円から988万6400円になる。

30年度税制改正では、課税所得を計算する際に差し引ける給与所得控除(収入に応じて65万〜220万円)を一律に削減する。基礎控除は上積みされるが、年収800万を超える層では削減の影響の方が大きく、増税になる見通しだ。

しかも基礎控除枠は年収2400万円を超えたところで段階的に縮小し、2500万円でなくなってしまう。

高所得者は、税金が増えても生活にあまり困らない「担税力」があるとされる。近年、株式や不動産の資産価値が上昇、大手企業を中心に賃上げも目立つ。

一方で、安定した仕事や資産を持てる者と持たざる者の格差問題もクローズアップされる中、高所得者への負担が重くなりがちだ。

税制改正は、世論動向が大きく影響する。有権者の顔色をうかがう政治家にとって、増税は反発を受けやすいだけに、とくに気を使う。このため、世論が受け入れやすい増税がターゲットになりやすい。

>>2以降に続く