OSS関係者もCPM犯行説を語っていた

その人物は「しばらくの沈黙の後、50年間誰にも話さなかった父とジムのことを話し始めた」と前置きして当時のタイ政界と父親、ジムの密接な関係を説明した。その中で第2次大戦中、対日レジスタンスの指導者だったという経歴のあるプリーディー首相とは特に親しく、その関係でキャメロン・ハイランドにジム・トンプソン氏が赴きCPM幹部との接触を試みたのではないかとの見方を示したという。プリーディー首相は後タイ政界を追われ中国に亡命する。

そして「父はCPMに殺害されたと話してくれた」とプロデューサーに語ったという。なんの物証もないものの、2人の別々の人物が当時を知る父親から得た証言が共に「マレーシア共産党による殺害」で一致していることから「ジム・トンプソン氏を殺害したのはCPMの可能性が極めて高い」と結論付けている。

このプロデューサーらによるこうした証言をまとめた記録映画「誰がジム・トンプソンを殺したのか」は今年10月に米オレゴン州で初公開され、バンコクでも公開された。

ネーション紙では「もしCPMによる殺害であれば、一切の手掛かりも遺体もその後の捜索で発見できなかったことは納得できる」としており、長年のミステリーに終止符を打つことになりそうな今回の証言のさらなる検証に期待を示している。

[執筆者] 大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など