■ワクチン世界市場の“草刈り場”となった日本■
子宮頸がん予防ワクチン 推進するWHOの影にゲイツ財団と製薬企業
太田美智子(フリーランスライター)

■わずか1年で日本が世界市場の4分の1
 逆風吹きすさぶなか、推進派は「がんから女性の命を守りたい」と勧奨再開を求めている。
だが、その背景には、途上国の貧困撲滅や社会貢献の名のもとに、製薬企業の利益を守ろうとする世界的な取り組みがある。
09年12月、GSKの「サーバリックス」が日本初のHPVワクチンとして発売され、国は翌年11月、「子宮頸がん等ワクチン接種緊急促進事業」実施を決めた。
補正予算を組み、HPVワクチン接種費用の9割を公費負担として10年度106億7700万円、11年度580億5200万円を計上した。
 おかげで、11年のサーバリックスの世界売上総額は前年比109%増の875億3800万円に跳ね上がった(1ポンド=173円換算)。

偶然ではない。GSKの株主向け年次報告書に、「日本の全国接種事業が主な要因」とある。
MSDの「ガーダシル」も11年8月の日本発売などを追い風に、この年、前年比22%増の1224億円(1ドル=102円換算)を売り上げた。
遡ること10年3月、土屋了介・国立がんセンター中央病院院長(当時)らを共同代表とする「子宮頸がん予防ワクチン接種の公費助成推進実行委員会」は、
日本での承認は「世界で99番目」「約30ヵ国で公費助成」と、日本の立ち遅れを強調していた。

ところがその翌年には、日本は世界市場の4分の1を売り上げる“草刈り場”になった。