新年を迎える準備に取り掛かる13日の「事始め」。

京都・祇園の花街では着物に袖を通した芸舞妓(げいまいこ)らが師匠宅でさらなる精進を誓う一方、
兵庫県内では黒いスーツ姿の暴力団幹部らが組事務所に集い、結束を誓った。

この日会合を開いたのは、六代目山口組、神戸山口組、任侠(にんきょう)山口組の3組織。

平成27年8月の指定暴力団山口組の分裂以降、そろって会合を開くのは今回初めて。
分裂前の習わしに従い、それぞれが新年の指針を示す四字熟語を発表した。
3組織の情勢は混迷を極めており、警察当局の警戒は来年も続くことになりそうだ。

3組織が会合で発表した四字熟語は、それぞれ意味合いが異なった。

関係者によると、六代目山口組は昨年と同じ「和親合一(わしんごういつ)」、神戸山口組は「一燈照隅(いっとうしょうぐう)」、任侠山口組は「実践躬行(じっせんきゅうこう)」。

「一燈照隅」とした神戸山口組はこの日、神戸市兵庫区福原町の傘下組織事務所で「納会」を開催。
10月末に同県淡路市の本部が神戸地裁から使用を禁じられたため、傘下組織での会合となった。

「一燈照隅」は天台宗を開いた平安時代の僧・最澄の教えとされる。
対立状態にある六代目山口組や新組織の任侠山口組の存在を意識したのか、
直系幹部への配布物には熟語が大書され「一人一人が一隅を照らす事になれば人の和が成り立つ」と添えられていた。

捜査関係者によると、神戸山口組は本部の使用が禁止されて以降、月に1度の「定例会」や「盃事(さかずきごと)」と呼ばれる儀式をそれぞれ異なる場所で開いている。
特定の組事務所が本部と認定され、司法手続きによって使用を制限される事態を避けようとの思惑があるとみられる。

六代目山口組の「和親合一」は2年連続の指針。
伝説的な存在とされる田岡一雄・3代目組長が定めた五箇条の「山口組綱領」に記された言葉で、
田岡組長が組を率いた30年以上前の時代に回帰する姿勢が示されているといえる。「事始め式」は例年と同様、神戸市灘区の総本部で開いた。

神戸山口組の最高幹部だった金禎紀=通称・織田絆誠(よしのり)=若頭代行(51)が代表となって今年4月末に結成した任侠山口組は、
この日、同県尼崎市の傘下組織事務所で「納会」を開催し、「実践躬行」について「口先ではいけない。まず行動せよの意。
理論や信条を自ら進んで行為にあらわしていくこと」と組員に説明。関係者の間では古巣批判の繰り返しとも受け取られている。

任侠山口組はこれまで2度記者会見を開き、神戸山口組の井上邦雄組長(69)らについて「口だけなんです。嘘なんです」などと批判してきた。

3組織をめぐっては、今年9月に神戸系組員ら複数の男が神戸市長田区の路上で、任侠トップの織田代表を暗殺しようと襲撃。
織田代表にけがはなかったが、もみ合いとなったボディーガード役の男性が射殺されるなど、互いに対立を深め、混乱を極めている。

水面下では組織や組員の引き抜きが日常的に行われていることから、三つどもえの抗争は来年も続く公算が大きい。
兵庫県警幹部は「県民の安全を第一に、引き続き厳重な警戒を続ける」と気を引き締める。

http://www.sankei.com/west/news/171214/wst1712140032-n1.html