https://hibishinbun.com/news/?a=8550
 国の原子力災害対策本部は13日、同災害対策特別措置法に基づき、石巻地方を含む宮城県内で捕獲された
ニホンジカの出荷・販売を全面禁止とする制限指示を出した。
先月の国のモニタリング調査において、栗原市で捕獲された個体から基準値(1キロ当たり100ベクレル)を超える
放射性セシウムが検出されたことによるもの。一方で、石巻市内での同様の調査で基準値超過はこれまで出ていない。
そのためニホンジカによる食害の解決と鹿肉のブランド化を推進する県は、検査体制を強化するとともに
国に対して規制の部分解除を求めていく。

 県内では平成25年に気仙沼市内で捕獲された個体から基準値を超える放射性セシウムを検出し、
県独自で同市内における出荷自粛を要請。今回、新たに栗原市内でも同様の事案があったことから、国が全県での規制を指示した。

 石巻市内では近年、ニホンジカの生息域拡大による農作物被害が拡大していることに加え、
有害駆除を行う猟友会会員の高齢化と減少も深刻化。それらの解決へ食用肉としての普及に注目が集まっている。

 また、市場に出荷するための解体処理施設は県内2カ所で、いずれも石巻市内にあることから産業への影響も懸念される。
県では現在、これまでの調査で同市内での基準値超過が一切ないことから、規制の部分的解除へ向け、
国と調整を進めているという。

 鹿肉の出荷制限指示の一部解除に関しては、ジビエ(野生鳥獣を食材として狩猟で捕獲)振興を進める長野県で前例があり、
今月7日の指示当日に富士見町で放射性物質検査の体制を整えたことで解除に至っている。
宮城県でもこれらを参考に検査体制を強化し、早急な解除申請に向けたい考えだ。

 地域課題解決と資源の活用を目的に、石巻市小積浜の鹿肉処理加工施設建設に関わった一般社団法人
リボーンアート・フェスティバルの松村豪太事務局長は出荷制限指示について
「率直にショックだが他地域とは言え、基準値を超えたのは事実」と受け止めつつ、
「石巻では一切問題がないのも事実。食の安全を第一に関係機関と調整し、これまで通り牡鹿の食のブランド発信へ力を注ぎたい」と話した。

 同法に基づく指示は主に県内で生産・捕獲される農水産物に関する出荷や、県外への移動を規制するもの。
石巻市と東松島市にはこれまでの指示で、露地において原木を用いて栽培されたシイタケなどに出荷規制がかけられている。