http://www.sankei.com/smp/west/news/171218/wst1712180004-s1.html


 1人の男性を4人で取り囲み、両手を粘着テープで緊縛して長時間監禁し、さらには2千万円を奪い取ろうとした−。こうした強盗致傷事件で、犯人グループの主犯格の男2人が起訴された。状況だけを見ると、凶悪な犯行だが、大阪地裁で11〜12月に開かれた裁判員裁判で下された判決は、求刑を大きく下回る執行猶予付き判決だった。量刑判断の分かれ目となったのは、事件のある背景が大きく影響しているという。

2人は大阪市生野区の飲食業の被告A(31)と、友人で同市西区の会社役員の被告B(34)。強盗致傷、営利目的略取、監禁致傷(Aはこれに加え住居侵入、窃盗)という、多数の罪名で起訴された。主な起訴内容は次のようなものだ。

 《2人は別の男2人と共謀し、平成28年7月14日午前1時半ごろ、大阪市天王寺区内のラブホテルで、当時39歳の被害男性を取り囲み、被告Aの車に連れ込んだ。4人のうち1人はポリ袋をかぶせたモデルガンを持って、被害男性に見せていた》

 《車内では被告Aの指示で、粘着テープで被害男性の両目を目隠しし、両手首を緊縛。同市内の被告Bが経営する会社事務所に連れて行くまでの間に暴行した》

 《事務所で被告Aらは「どうやってカタつけんねん」「なんぼ用意できんねん」などと迫った》

 《被害男性が「2千万円払う」と約束すると、金を調達させるために同市内を連れ回した。被害男性は隙をついて逃走したが、監禁行為は14日午後4時40分ごろまでの約15時間続き、被害男性は暴行によって頭などに約1週間の軽傷を負った》

 11月9日の初公判で、2人は実行行為についておおむね起訴内容を認めた。だが、続く弁護側の発言が注目を浴びた。

 「2人は金目当てではなく、被害男性が女性に強要した愛人関係を解消させるためだった」

 「愛人関係」とは何だったのか。公判での関係者の証言をまとめると−。

 被害男性は同年春、18歳だったC子に「2千万円出資してあげるから、バーを開店しないか」と持ちかけた。やがて、「C子が店長となり、音楽グループでともに活動をしていた当時19歳のD子が従業員として働く」という内容で話が進んでいった。

 もともと“うますぎる話”に不信感を抱いていたC子は、次第に被害男性と距離を取るようになり、最終的に連絡を絶った。すると被害男性の怒りの矛先はD子に向かった。

 事件発生の数日前、被害男性はD子に対し、バーの開店をめぐり「このままだと損害が出る」と激しい口調で迫った。そして携帯電話のアドレス帳を開き、暴力団関係者だという連絡先を見せながら、「暴力団関係者が音楽グループのメンバー全員に金の取り立てに行く」「C子を風俗に売り飛ばす」とまくし立てた。

 D子にとって音楽グループは「初めてできた家族のような存在」で、C子はそのメンバー。「やめてください。時間をください」と頭を下げたが、被害男性の怒りは収まらなかった。そして、「C子の代わりに店長となり、被害男性の愛人になる」との提案を受け入れた。

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