縮小を続けるたばこ市場で大ヒットしているのが「加熱式たばこ」だ。そもそも加熱式たばこは、喫煙に伴う健康リスクを軽減するために開発されたもの。禁煙の店が増える流れの一方で、「紙巻きたばこはダメだが、加熱式タバコならOK」という飲食店が増えてきている。吸う人と吸わない人が共存できる可能性があるだけに、加熱式たばこ愛好者にはいっそうのマナー向上が求められる。
■縮小するたばこ市場で大ヒットの「加熱式たばこ」
日本たばこ産業(JT)の「2017年全国たばこ喫煙者率調査」では、成人男性の喫煙率は28.2%と3割を切る数字が続いている。10年前の喫煙率が40.2%、20年前は56.1%だから、少数派の喫煙者には肩身が狭い今日この頃。

吸わない人はもちろん、吸う人も他人のタバコの銘柄にはそれほど関心がないという。現在、どんなタバコの銘柄が売れているのだろうか。10年前と比較してみた。

念のため、タバコと縁がない人にとっては、すっかり銘柄が変わったように見えるかもしれないが、現在主流の「メビウス」は2012年に「マイルドセブン」が名称を変えたもの。

ランキングを見て驚くのは「わかば」「エコー」など、かつて3級品と呼ばれていた銘柄の上位進出である。10年前にはベスト20にすらランクインしていなかったが、2010年のタバコ大幅値上げで一気に人気銘柄に浮上した。

このときの値上げでは300円だったマイルドセブンが410円となり、愛煙家の財布を直撃。「わかば」も190円から250円と値上げされたものの、ヘビースモーカーにとって安さは魅力。銘柄を変更した愛煙家は多かったようだ。ちなみにこの年、喫煙率は3ポイント急落している。

そんな縮小を続けるたばこ市場で大ヒットとしているのが「加熱式たばこ」だ。

■「IQOS」「glo」「Ploom TECH」が三つ巴の戦い
2015年に「マールボロ」などを販売するフィリップ モリス ジャパンの「IQOS(アイコス)」を皮切りに、「ケント」などのブランドを有するブリティッシュ・アメリカン・タバコ・ジャパンが「glo(グロー)」を、そして「メビウス」などを販売する日本たばこ産業が「Ploom TECH(プルーム・テック)」を相次いで発売。想定を超える売れ行きで、品切れが話題になったのはご存じの通りだ。

欧米で普及している「電子たばこ」と混同しやすいが、電子たばこはニコチンの入った液体を熱し、霧状に気化したものを吸引するもの。しかし、日本では薬事法でニコチンの入った液体の販売が禁止されているため、たばこの葉を燃やさずに加熱するという方式が採用されたのだ。

そもそも加熱式たばこは、喫煙に伴う健康リスクを軽減するために開発されたものだ。たばこでもっとも有害とされているのが点火部から立ち上がる副流煙。ベンゼンなど有害成分の濃度は主流煙の数倍から数十倍といわれ、受動喫煙で主に問題にされているのがこの副流煙だ。

ところが、加熱式はたばこ葉を燃やさないので、有害成分の発生量は紙巻きたばこの1割以下。最も加熱温度が低い「プルーム・テック」にいたっては1%程度と極端に低く抑えられている。

加熱式たばこに変えた人に理由を聞くと、一番多い答えは有害成分の低さよりもニオイの少なさ。すっかり嫌われるようになったたばこのニオイ。しかし加熱式たばこなら服や髪、部屋にニオイがつかないと非喫煙者からも歓迎されているのだ。

さて、そんななか厚生労働省、東京都ともに2020年の東京五輪・パラリンピックに向けて、屋内を原則全面禁煙にしようとする動きが活発だ。先行している「マクドナルド」に続き、大手外食チェーン店の「KFC」「デニーズ」「サイゼリア」なども分煙席を設けない全席禁煙へと舵を切り始めた。

複数の喫煙者に聞いてみると「子どもも多くいるファミレスなら仕方ないし、ファミレスやファストフード店でそこまで吸いたいとも思わない」と受け入れる声が多い。問題はやはり長居をするアルコールが飲める場所のようだ。

■「加熱式タバコはOK」という飲食店が増えてきた
そんな禁煙の店が増える流れの一方で、「紙巻きたばこはダメだが、加熱式タバコならOK」という飲食店が増えてきている。

新橋でカジュアルなワインバー“Borracho”を営む斎藤崇貴さんに聞いた。
(略)

とはいえ、もちろん加熱式たばこだから何でも許されるわけではない。吸う人と吸わない人が共存できる可能性があるものだけに、加熱式たばこ愛好者にはいっそうのマナーの向上を求めたいところだ。

プレジデント:http://president.jp/articles/print/24087