https://www.cnn.co.jp/m/world/35111150.html

2017.12.23 Sat posted at 10:00 JST
(CNN) インドネシアの南スマトラ州にある小村。農地やプランテーションに囲まれ、まだ8歳の男の子が母親と一緒に座り笑みを浮かべている。

この男の子はアルディ・スガンダ君。アルディ・リザル君としても知られる。6年前は2歳にしてたばこ中毒のチェーンスモーカーであり、1日に数箱を吸っていた。

アルディ君は「やめられなかった」「たばこを吸っていないと口が酸っぱくなり、頭がクラクラする」と振り返る。「今は幸せ。熱意が増したように感じる。体もフレッシュな状態だ」という。

アルディ君は「チェーンスモーカーの幼児」として世界的に有名になった。際限なくたばこを吹かす様子をとらえた動画は世界中で数百万人が視聴した。

母親のダイアナさんは当時を振り返り、顔をこわばらせる。アルディ君は怒りっぽく、たばこを与えなかったり、購入費をやらなかったりするとかんしゃくを起こした。「壁に頭を打ち付け始めた。狂ったようで、たばこが手に入らないと自傷行為に及んでいた」

人々はダイアナさんを母親失格だと責め、育児能力をたびたび疑問視したという。

インドネシアで喫煙に手を出した子どもはアルディ君だけではない。同国では毎日、26万7000人の子どもがたばこ関連製品を使用していると推定されている。

ダイアナさんはアルディ君のたばこ中毒が始まったきっかけについて、同年代の子どもからの同調圧力や、喫煙者への接触が原因になったとみている。

アルディ君は毎朝、ダイアナさんが自家製野菜を売る市場について行っていた。そこの人々がアルディ君に喫煙を教えた可能性があるといい、たばこは市場で頼むことにより容易に入手できただろうと話す。

これは世界の多くの地域では現実味に欠ける言い訳のように響くだろうが、インドネシアの場合は大いにあり得る。同国は男性の喫煙率が世界で最も高く、青少年の喫煙者の割合でも世界有数だ。広告や販売に対する規制が緩いことや価格の低さがこうした傾向に拍車をかけている。

アルディ君は現在、健康な男の子として学校に通っており、成績も良い。ただここに至るまでの過程には、インドネシアを代表する児童心理学者、セト・ムルヤディ国家児童保護委員会議長との長年にわたるリハビリがあった。

ムルヤディ氏は、中毒症状を持つ子どもたちと治療を進める上での利点のひとつは精神面での俊敏性だとみている。アルディ君の場合、その年齢や知力から、同氏の治療に対し素早く反応することになった。ムルヤディ氏はランニングや登山、遊びによりアルディ君の気を紛らわせる一方、毎日の喫煙量を少しずつ減らしていった。

「彼はたったの3歳で1日に4箱を吸っていた。ただ、まだ非常に若いことから私には自信があった。心理学的に言って、子どもとしての彼は非常に柔軟であり、治療も比較的容易だった」(ムルヤディ氏)

アルディ君は「もう喫煙はしたくない。病気になりたくない」という。現在の望みは、他の子どもが同じような目に遭うのを防ぐための取り組みに関わることだ。

「チェーンスモーカーの幼児」の動画は何百万回と再生された
https://www.cnn.co.jp/storage/2017/11/29/308576f32795d6d89222a4c22bb85909/t/320/180/d/nr-bilchik-child-smokers.jpg
自宅前でポーズを取るアルディ君
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