美容医療でトラブルとなった広告例
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しわ取り注射など“プチ整形”に豊胸…。これら「医師が行う美容医療」をめぐり、高額費用請求や健康被害など、さまざまなトラブルが起きている。専門家は「受ける場合は、十分な説明を求め、かつ契約は慎重に」と呼び掛けている。

■高額被害のシニア

 国民生活センターによると、全国の消費生活センターなどに寄せられる美容医療に関する相談は年間約2千件。

 中でも多いのが、施術料金など費用をめぐる相談だ。

 診療報酬で金額が決められている一般医療と異なり、美容医療はほとんどが「自由診療」だ。つまり、施術料金は個々のクリニックで自由に設定できる。

 このため、料金設定の基準が不明だったり、料金が明示されないまま施術を受けて後から高額を請求されたりするなどのトラブルが後を絶たない。

 とくに60歳以上のシニア世代で、高額な費用を請求されトラブルとなるケースが目立つ。

 国民生活センターが2011年4月から16年8月末までに寄せられた60歳以上の美容医療をめぐる相談1107件を調べたところ、100万円以上を請求されたケースは339件で3割を占めた。うち34件は500万円以上だった。

■相談だけのつもりが…

 昨年4月、神奈川県の70代女性から「しわ取り注射で1300万円請求された」との相談が寄せられた。

 女性は折り込み広告を見て美容クリニックを訪ねた。相談だけのつもりだったが、医師の求めに応じて同意書にサインしてしまう。その日のうちに注射を4本打たれ、お金を振り込むように言われたという。

 この女性のように、相談だけのつもりが、勧誘されて即日施術となるケースは少なくない。

 12月6日、大手美容クリニックが解決金を支払うことなどを条件に和解が成立した裁判でも、原告の多くが受診当日に施術を受けていた。

 被害対策弁護団の1人、花垣存彦弁護士は「『今日やれば割引きする』『半額にする』などと言われ、その日に手術を受けた人も多い」と話す。

 同裁判は、顔のたるみを取るために受けた「吸収糸リフト」と呼ばれる手術で事前の説明にない顔面の痛みや皮膚のひきつりなどの健康被害が出た、などとして賠償を求めていた。

 美容医療による健康被害は、「プチ整形」と呼ばれるボトックスやヒアルロン酸などの注射でも起きている。

 注射による施術を「手軽にできて副作用やリスクもない」と誤解している人は少なくない。

 国民生活センターは「施術内容やリスクについて説明されていない事例も多い」と指摘し、「メリットばかり強調する広告はうのみにしないで」と呼び掛ける。

■即日施術禁止を

 こうしたトラブル増加を受け、厚生労働省は昨年3月、自治体や関係団体に対し、手術のリスクも説明することを医師らに遵守させるよう求める通知を出した。

 また、同年9月には消費者向けに美容医療への注意喚起を促す資料を作成し、ツイッターやフェイスブックなどSNS(会員制交流サイト)で、(1)医師の説明を十分に理解できたか(2)その施術は「今すぐ」必要か−の2点を再度考えた上で施術を受けるか決めるよう呼び掛けた。

 しかし、依然としてトラブルは減らないのが現状だ。そこで花垣弁護士らは12月6日、厚労省の通知に、「即日施術の原則禁止」を明記することを求める要請書を厚労相に出した。

 花垣弁護士は「美容医療の手術は、医学的には緊急性がなく、即日手術を行う必要性はない。しかし、トラブルとなったケースの多くが即日手術をしていた。患者の熟考の機会を尊重するために、即日手術は原則禁止とすべき」とした上で、「消費者も、どんな医療行為にもリスクがあることを知り、少なくとも勧誘されたその日に治療を受けるのは避けてほしい」と話している。

配信2017.12.24 12:00更新
産経ニュース
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