■どんな影響が?

'17年は、インターネット上の仮想通貨・ビットコインが急激な値上がりを続けた年だった。
'09年に運用が開始されたビットコイン(単位はBTC)は、'17年4月には1BTC=14万円前後であったが、同年12月には190万円前後と10倍以上に高騰しているのだ。

バブル期を彷彿とさせるような狂乱の相場とあって、世界中のプロ・アマチュア投資家がビットコイン投資に殺到。
ビットコインの時価総額は12月13日の時点で2940億ドル(約33兆円)、トヨタをも抜き去った。

だが急激な値上がりから、その崩壊を予期する向きも多い。
不動産や株式とも違う新しい投資対象である仮想通貨は、もし崩壊すれば市場経済にどのような影響があるのか。

そもそも仮想通貨が「通貨」なのかどうかというと、法的にはもちろんだが、経済学上もそれに当てはまらない。
経済学における通貨の3要素は、(1)価値の尺度(2)交換の媒介(3)価値の保存であるが、少なくとも(3)は満たしていない。

イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長も、仮想通貨は「極めて投機的な資産」であり、「法定通貨としての性質を持たない」との見解を示した。
さらに、「ビットコインは現時点で支払いシステムとしての役割は非常に小さい」、「価値保存の手段として安定していない」とも述べている。

ニューヨーク連銀のダドリー総裁も、オーストラリア準備銀行のロウ総裁も、イエレン議長と同様に仮想通貨について懐疑的な見方を示している。
仮想通貨を支えるインターネット上のシステムは「ブロックチェーン」と呼ばれるものだ。

複雑なので詳細な説明は省くが、この技術のおかげで、中央銀行や政府といった支配的な組織が介在しなくても、世界中の人々と自由に取り引きできるようになる。
この技術は間違いなく素晴らしいもので、やがて仮想通貨だけでなく証券取引や選挙投票など、いろいろな形で社会に取り込まれていくことになるだろう。

しかし、仮想通貨そのものを資産としてみるのは、一般の人にはリスキーだ。
というのも、昔から言われていたことだが、おそらくビットコインの大口保有者は知り合い同士で連絡を取り合い、相場を動かしているからだ。
わずか1000人の投資家が40%の資産を握っているとされる市場だが、そのような「馴れ合い」が有価証券で行われていれば間違いなく金商法違反である。

12月18日、シカゴ・マーカンタイル取引所でビットコインの先物取引が開始された。
先物取引においては、連動するかたちで上場投資信託(ETF)が導入される場合がある。
だがビットコインの場合は、その放埓な市場の性格から現物を裏付けとするETFの申請はすでに却下されているため、先物に連動するETFも却下されるだろう。

つまり、現状のままビットコインが崩壊したとしても、他の市場と連動しているわけではないため、直接的な影響を与えるわけではない。
保有者が損失を被り、株式や証券に資金を逃がす際に若干の価格の揺れが起きる程度だろう。
ビットコイン価格の動きは魅力ではあるが、現物をプロの馴れ合いで売買しているわけで、一般人にはリスクの大きいものと考えるべきだ。

『週刊現代』2018年1月6・13日号より
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/54024