群馬県千代田町と埼玉県行田市にまたがる利根大堰おおぜきを通って利根川を遡上そじょうしたサケの数が2017年は3389匹にとどまり、11年ぶりに4000匹台を割った。遡上が始まる10月に1匹も確認されないという異例の状況で、16年の4038匹に続く低水準。遡上数が減少した明確な理由は分かっていない。近年は1万匹超えが珍しくなかっただけに、長年にわたり稚魚を放流し続けている団体関係者は残念がる。全国的なサケの来遊状況は北海道が前年に比べて3割減らしているのに対し、青森や秋田、新潟の各県で2割以上増えるなど明暗が分かれている。

高崎市内の烏川でサケの稚魚を放流する市民ら=2017年3月
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利根大堰のサケ遡上数の推移
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◎日本海側は増加の一方 太平洋側は減少傾向

 水資源機構利根導水総合事業所が毎年10月1日から12月25日までの間、遡上数を自動計測している。17年は台風による増水で破損しないように10月21日から11月2日まで計器を撤去したため13日間のデータはない。ただ10月中の遡上はなく、データのある10月20日まででみると少なくとも05年以降で初めてのこととなった。その後は計測が復活した11月3日に20匹を確認し、11月が前年比5%増の3231匹、12月が同41%減の257匹だった。

 利根大堰でのサケの遡上数は調査を始めた1983年こそ21匹だったが、稚魚の放流の活発化や魚道改修によって年々増えた。2002年に1090匹、06年に3215匹と増えると、11年に1万5095匹、12年に1万5889匹、13年に1万8969匹と3年連続で過去最多を更新。しかし、14年に8759匹と半減すると、15年に1万2338匹と増加に転じたものの、16年は4038匹と激減した。

 県水産試験場は「サケは海洋生活期が長く、遡上数がなぜ減少しているか正直分からない。ここ数年間の動向を注意深く見ていく必要があるだろう」とみる。

 北海道から茨城まで11道県のサケの来遊状況をまとめる水産研究・教育機構北海道区水産研究所によると、17年11月末現在で北海道が前年比33%減の1731万4000匹、太平洋岸の岩手が15%減の154万7000匹、宮城が5%減の89万1000匹となった。一方、青森が20%増の92万1000匹だったのをはじめ、日本海岸の秋田(26%増の13万6000匹)や新潟(24%増の24万3000匹)で増加傾向が目立つ。

 サケは一般的に北の海を回遊し、3〜5年ほどで生まれた川に戻ってくるとされる。研究所は「2013年、14年夏のオホーツク海などの海水温を含めた何らかの環境変化がサケの成育不良につながっているのではないか」と推測。ただ、日本海岸での遡上数の増加は不明という。

 30年ほど前から高崎市内でサケの卵を配り、毎年3月に1000人を超える市民に烏川で稚魚を放流してもらっている高崎青年会議所の担当者は「遡上数の減少はとても残念。川の環境を良くするなどし、1匹でも多くのサケが遡上できるようにしていきたい」と話す。

配信 2018/01/04
上毛新聞
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