岡山県美咲町などが出資する第三セクターが運営する卵料理専門店「食堂かめっち。」が22日、10周年を迎える。地元産の卵や米を使った卵かけご飯のPRが奏功し、今では年間約7万人が訪れる観光スポットに成長した。海外からの観光客を意識した新メニューの開発などさらなる“進化”へ知恵を絞っている。

 「人口1万5千人の町に約120万羽のニワトリがいて、毎日100万個の卵を産む」と表現される美咲町。西日本最大級の養鶏場、「棚田百選」の田んぼで生産される自慢の米がそろうほか、卵かけご飯を日本で初めて食べ、世に広めたとされるジャーナリスト・実業家岸田吟香(1833〜1905年)の出身地としても知られる。

 「2005年の3町合併により、卵かけご飯をキーワードにした町づくりのストーリーが出来上がった」。仕掛け人の一人、町産業建設観光課の川島聖史課長補佐(50)は振り返る。

■お代わり自由

 誰にでも愛される卵かけご飯をコンセプトに「かめっち。」がオープンしたのは08年1月22日だった。ほとんどの客が注文するという「黄福定食」(350円)はご飯に生卵とみそ汁、漬物が付く。茶わん1杯に卵1個というスタイルで、お代わりは自由。地元産のしょうゆをベースとしたシソ、ネギ、ノリと3種類の特製たれも好評だ。

 町によると、17年11月末までの来店客は延べ約72万人。当初の年間目標2万人を大きく上回り、春の大型連休やお盆には2、3時間待ちとなるケースもあるという。

 職場旅行で初めて来たという女性(20)=神戸市=は「いつもならお代わりという発想はないけど、ご飯もおいしいので箸が進む。プライベートでも来てみたい」と笑顔でお代わりしていた。

 オープン時から同店の厨房(ちゅうぼう)に立つ女性(63)は「『おいしかった』の言葉が励みになるし、九州や関西からわざわざ食べに来てくれていると分かるとうれしい。顔見知りが増え、リピーターにも愛されている」と目を細める。

■新メニュー開発へ

 10周年の節目に合わせ、新たな動きも見せている。海外からの旅行客らをターゲットにした新メニューの開発がその一つだ。

 黄福定食をはじめ、オムレツ、親子丼にオムライス―。シンプルなメニューが売りの同店だが、たまごソムリエとして活躍する友加里さん(29)=東京=に、生卵が苦手な人や香辛料の工夫など海外客にも対応するレシピ開発を依頼した。今月21日に開く10周年感謝祭で発表される運びになっている。

 町内の子どもたちを対象に、レシピを公募する計画もある。川島課長補佐は「将来、就職や進学で町を出た子どもたちが卵かけご飯を食べると古里を思い出す。そんな自慢の存在にしていきたい」と話している。

(2018年01月04日 22時52分 更新)
山陽新聞デジタル
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