寺田長官の発言と最高裁の主な出来事
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最高裁の寺田逸郎長官(69)が8日、定年退官する。約3年9カ月の在任期間中、10事件が大法廷で審理され、女性の再婚禁止期間を短縮する法改正や衛星利用測位システム(GPS)捜査の中断につながる判断を示すなど、国民生活に大きな影響を与えた。退官に際しては「個別の裁判の質問には答えられない」などとして慣例の記者会見を実施しない異例の対応をとる。

 最高裁判事だった平成26年4月から長官に就任。裁判官出身ながら法務省勤務が長く、司法制度改革や民事立法の原案作りに携わり、前任の竹崎博允氏からは行政手腕を「裁判官離れしている」と評されていた。

 在任期間で特徴的なのは、さまざまな事件が大法廷で審理されたことだ。15裁判官全員が加わる大法廷へは(1)憲法判断を行う場合(2)重要な判例変更をする場合(3)重要な論点が含まれる場合−などに審理が回付される。

 これまで国政選挙のたびに選挙無効を求める「一票の格差」訴訟が起こされ、大法廷回付されるのが慣例となってきたが、これに加えて27年12月には「夫婦は同一の姓とする」という民法規定を「合憲」と判断。「女性は離婚後6カ月間、再婚できない」とする規定については「100日を超える部分は違憲」とした。その後、再婚禁止期間を「離婚後100日」に短縮する改正民法が成立した。

 刑事裁判でも29年3月、裁判所の令状なしに捜査対象者の車両にGPS発信器を取り付けた捜査を「違法」と判断した。GPS捜査のための「立法的措置」に言及し、警察庁が直後に全国の警察にGPS捜査を控えるよう通達を出した。

 司法政治を研究する牧原出東京大教授(政治学)は、夫婦同姓規定の判決で「国民的議論、すなわち民主主義的なプロセスに委ねることがふさわしい解決」とする補足意見を付けたことに着目し、「法律論で詰めるというより社会事情も含め繊細に考慮したことがうかがえる」と指摘。GPS事件など「社会の変化に対応し、人権に配慮する判断を示してきた」とみる。

 28年4月には、ハンセン病患者が当事者となった過去の裁判で「差別的取り扱い」があったとする調査報告書を公表した。牧原氏は「国民への説明責任を果たそうとする姿勢を感じる」とし、「司法を国民に近づけることを意識したのではないか」としている。

 新長官の大谷直人氏は9日付で就任する。寺田氏は退任会見を開かない理由について(1)個別の裁判についての質問には答えられない(2)司法行政の課題については新長官が話すこと−としている。

配信2018.1.8 00:24
産経ニュース
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