弁護士ドットコム 2018年01月13日 10時07分
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犬と社会のよりよい関係とは?
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今年は戌年。日本列島でも、犬は縄文時代から良きパートナーとして、人間の暮らしの中にあった。しかし、社会が複雑化するにつれ、犬にまつわるトラブルや問題が発生。現代でも課題は少なくない。環境省によると、殺処分される犬や猫は年々減少してるが、2016年度には犬1万424頭、猫4万5574頭となっている。

そうした中、犬とより良い共存が実現するには何が必要なのか。基本的に殺処分なく、「ペット天国」「犬天国」と言われる先進国、ドイツでの事例を紹介。『世界のアニマルシェルターは、犬や猫を生かす場所だった』(ダイヤモンド社)の著者で、動物に関する法制度の研究している本庄萌さんに聞いた。(弁護士ドットコムニュース編集部・猪谷千香)

●レストランや電車も犬と一緒に

——ドイツはなぜ「ペット天国」「犬天国」と呼ばれている?

犬が住みやすく、人々も犬のためになることを考える意識が比較的高いことが理由ではないかと思います。

住みやすさの例としては、移動の自由が広く認められている点が挙げられます。私が1年前フランクフルトに数か月滞在していた時も、レストランや電車の中などで、小型犬から大型犬まで様々な犬が飼い主の方と一緒にいるのをみました。

犬好きが多いドイツでは、周りの人も犬がいても嫌な顔をせず、むしろレストラン側が犬にお水を持ってきたり、電車の中では他の乗客の表情が柔らかくなったりします。もちろんそれは、犬がレストランや電車でもおとなしくいられるよう社会的順応性を身につけているからなのですが。

また、意識の高さについては、ペットショップに対する社会の受け止め方が良い例です。犬を店頭に展示する生体販売は、ドイツでは違法ではありません。ところが、あるペットショップが犬を店頭で販売しようとした時、そのショップでは動物の習性を考慮したケージが用いられ、運動の機会が確保されていたにもかかわらず、倫理的に許されないとして、市民によるデモが起こりました。

店頭に置かれる動物に負担がかかる可能性、ペットショップという業者が入ることで、違法に他国から入ってきた動物の販売の温床となる可能性などが考慮され、生体販売への批判へと繋がったのです。社会的に受け入れられないと人々が考え、それをしっかり伝えあうことで、そうした高い意識が広く共有されているのでしょう。

●人間が動物を管理してきた歴史を持つヨーロッパ

——ドイツだけが進んでいる?

このような意識はヨーロッパの多くの国で共有されており、ドイツだけがいわゆる「ペット天国」いうわけではありません。これまでメディアで取り上げられてきたことがそうした特別なイメージを作っているようにも思います。

たとえば、隣国のチェコ共和国でも、ペットショップで犬猫が販売されるのは一般的ではなく、ブリーダーと交渉して直接購入しますし、レストランやトラムなどの公共空間でも犬をよく見かけます。

また、動物保護法も、西欧の多くの国が制定し、EUレベルでも動物福祉に関する議論が盛んに行われています。そうした西欧の動物保護の背景としては、歴史的・宗教的な要素が挙げられます。西洋では、動物利用(時に搾取)と動物保護が振り子のように揺らいできました。

日本では、食べることを目的に飼育する食用畜産は近年まで発達しなかったのに対し、西洋は長い食用畜産の歴史を持ちます。その上、人間と動物を区別するキリスト教などの宗教の広がりも、動物利用を肯定することになりました。

その後、動物を残虐に扱うべきではないといった声が次第に大きくなりますが、その根底には、動物は人間が管理するものといった中世から続く動物への姿勢があるという指摘もあります。人間が動物を管理する、という意識と、法のもとに動物を置くことには、親和性があるのかもしれません。

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