平均年収186万円の人々

 いま日本の社会は、大きな転換点を迎えている。格差拡大が進むとともに、巨大な下層階級が姿を現わしたからである。その数はおよそ930万人で、就業人口の約15%を占め、急速に拡大しつつある。それは、次のような人々である。

 平均年収はわずか186万円で、貧困率は38・7%と高く、とくに女性では、貧困率がほぼ5割に達している。

 暗い子ども時代を送った人が多い。いじめにあった経験をもつ人が3割を超え、不登校の経験者も1割に達し、中退経験者も多い。支えになる人も、少ない。親しい人の数は少なく、地域の集まりや趣味の集まり、学校の同窓会などに参加することも少ない。そして将来の生活に、過半数の人々が不安を感じている。

 どんな人々か。パート、派遣、臨時雇用など、身分の不安定な非正規雇用の労働者たちである(技能職・建設職など)。仕事の種類は、マニュアル職、販売職、サービス職が多い。平均労働時間はフルタイム労働者より1-2割少ないだけで、多くがフルタイム並みに働いている。

なぜアンダークラスが誕生したか

 資本主義社会の下層階級といえば、かつてはプロレタリアート、つまり労働者階級と相場が決まっていた。自営業者などの旧中間階級を別とすれば、資本主義社会を構成する主要な階級は、経営者などの資本家階級、専門職・管理職などの新中間階級、そして労働者階級であり、労働者階級は最下層のはずだった。

 ところが同じ労働者階級であるはずの正規雇用の労働者は、長期不況にもかかわらず収入が安定し、貧困率も低下してきている。労働者階級の内部に巨大な裂け目ができ、非正規労働者は取り残され、底辺へと沈んでいったのだ。

 新しい下層階級=アンダークラスの誕生である。アンダークラスはこれまで、とくに米国で、都市の最下層を構成する貧困層を指す言葉として使われてきた。しかし格差が拡大するなか、日本にも正規労働者たちとは明らかに区別できるアンダークラスが誕生し、階級構造の重要な要素となるに至ったのである。こうして生まれた新しい社会のあり方を「新しい階級社会」と呼ぼう。
(抜粋)
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180114-00053945-gendaibiz-bus_all