http://www.bbc.com/japanese/42770480

トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は21日、クルド人民兵組織に対する大規模な攻撃の一環として、同国の地上部隊がシリアとの国境を越え、同国北部に侵攻したと述べた。

トルコがテロリストと考えるクルド人民兵組織「人民防衛部隊」(YPG)は、トルコ南部と国境を接するアフリン地区で活発に活動している。YPGはアフリンからトルコ軍を押し戻したと述べ、トルコの国境付近に砲撃を行ったと明らかにした。
YPGは、過激派組織「イスラム国」(IS)と戦う米国が支援する有志連合で大きな役割を担っている。

エルドアン大統領は、YPGを「あっという間に」打ち負かすと約束したが、民間人に犠牲者が出るのを避けたい米国は、トルコに「抑制」を求めた。
トルコは、YPGがトルコ国内で活動が禁止されているクルド労働者党(PKK)とのつながりがあると考えている。
トルコ政府は数カ月前からアフリンや、そこから約100キロ離れたマンビジからクルド人勢力を掃討すると警告していた。
アフリンで何が起きているのか

20日に始まった軍事作戦「オリーブの枝」は、クルド人勢力のアフリンからの掃討を目指す。今月に入り米国が、IS戦闘員たちが戻って来ないよう、クルド人勢力とアラブ人民兵の対IS連合による新たな「国境警備部隊」の結成を援助すると表明しており、トルコはこれを受けて作戦実行を急いだとみられている。
YPGや、「シリア民主軍」(SDF)と呼ばれる対IS連合は、テロリストとのつながりを否定している。米政府もこの説明を受け入れている。
20日のトルコ空軍による空爆の後、21日には、トルコ軍とトルコ寄りのシリア反体制武装組織「自由シリア軍」(FSA)がシリア国内に侵攻した。

トルコのビナリ・ユルドゥルム首相は、シリア国境内に深く入り込む形で30キロの「安全地帯」の形成を目指すと述べた。
しかし、YPGの広報担当者ヌリ・マハムディ氏は、トルコ軍が「撤退を余儀なくされた」と語った。
トルコ側では、FSAの司令官アブドゥル・ハヒム少佐がロイター通信に対し、約2万5000人の戦闘員が攻撃に参加したと語った。トルコ軍の地上部隊の数は明らかになっていない。
トルコ軍は、21日の空陸両面の作戦で45の標的を攻撃したと発表した。これに先立ち、クルド人勢力の153施設が空爆によって破壊されたと明らかにしている。
エルドアン大統領は21日、シリア国内のクルド人民兵やPKKを掃討すると約束し、「我々の戦闘機が飛び立ち空爆を開始した。そして今、地上作戦が実施されている。YPGが(中略)アフリンから逃げ出している様子が今では確認できる」と語った。
大統領はさらに、トルコ国内でクルド人擁護活動に参加する者は「大きな代償」を払うと警告した。その後、警察はイスタンブールを含むトルコの数多くの都市で開かれた抗議デモを解散させ、数人を逮捕した。

軍事作戦による死者

トルコとクルド人勢力の両方に死者が出ている模様だ。
YPGは、少なくともトルコ軍兵士4人とシリア反体制勢力の戦闘員10人が21日午前の戦闘で死亡したと述べた。しかし、トルコ側は確認していない。
英国に拠点を置くシリア人権監視団は、21日のトルコの空爆で民間人11人が死亡したと指摘した。20日の空爆では民間人6人と戦闘員3人の合計9人が死亡したとしている。トルコ政府は死亡者全員がクルド人民兵だと述べている。
(リンク先に続きあり)

(英語記事 Syria: Turkish ground troops enter Afrin enclave)

各勢力の支配地域。濃い紫色はシリア反対勢力、薄い紫色はクルド人勢力、緑はシリア政府、オレンジ色は「イスラム国」(今月8日時点/IHS調べ)
https://ichef.bbci.co.uk/news/410/cpsprodpb/13C58/production/_99648908_syria_control_jan2018_640_map-nc.png