来年の道徳教科書


■日本の下町ボブスレー

「日本の下町の伝統的(でんとうてき)な職人技術(しょくにんぎじゅつ)は日本の誇りだ。
 2018年、平昌オリンピックで下町でつくったボブスレーを活躍(かつやく)させよう。」

そうして始まった、下町ボブスレープロジェクトは
安倍首相(あべしゅしょう)や大手広告会社(こうこくがいしゃ)、テレビ局などのえらい人達が後押しして進められました。
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そのころ、インターネットやテレビ、本などで「日本すごい、日本すごい」と自画自賛(じがじさん)していた私たちは、
日本人がなんでもできる民族(みんぞく)だと思い込んでいました。

しかし、日本にとって初めてのボブスレー開発(かいはつ)はむずかしいものでした。
実際に出来上がったボブスレーは性能(せいのう)が悪く、日本代表が使うことは出来ませんでした。
そこで、弱小国(じゃくしょうこく)だったジャマイカに、無料で乗ってもらうことにしました。

ところが、下町ボブスレーで成績が悪かったジャマイカの選手が、
たまたま乗ったラトビア製のボブスレーでよい成績を収めたことで
下町ボブスレーはそっぽを向かれてしまいました。
ラトビアはボブスレー制作がさかんで、伝統(でんとう)ある技術で作られたボブスレーは
世界中から評判(ひょうばん)が高いものでした。

いっぽう、下町ボブスレープロジェクトに使ったお金を、
ドラマや映画、グッズなどの企画で取り戻したり、政治利用(せいじりよう)する予定だったえらい人達は、
後に引き下がることができず、ジャマイカに謝罪と巨額の賠償を請求しました。

それでもジャマイカの選手たちは、ラトビアの伝統(でんとう)ある職人芸(しょくにんげい)で作られたボブスレーを選んだのでした。