2018年02月09日 金曜日

 東北電力は青森、岩手、秋田の北東北3県の送電能力増強計画で、送電容量を当初の最大1.6倍に増やす。全国の電力融通を指揮する「電力広域的運営推進機関」が昨年、送電線を建設する業者を募ったところ、再生可能エネルギーの発電を担う新電力会社の応募が殺到したため。東北電は再生エネの受け入れ拡大へ検討を進める。

 再生エネの固定価格買い取り制度が2012年に始まって以降、東北では太陽光や風力などの新規参入が相次いだ。北東北の送電網は16年5月、再生エネなどの電力を受け入れる空き容量がゼロとなっていた。

 広域機関は昨年3月、送電線増強の基本計画をまとめ、建設事業者を募集。洋上と陸上の風力発電業者を中心に応募が多数あり、総容量は当初の増強計画の280万キロワットを大幅に上回る1545万キロワット(344件)に達した。東北電管内の過去最大電力需要に匹敵する。

 これを受け、東北電は大規模な送電能力増強を計画。青森県から福島県に至る既存の50万ボルトの基幹送電線に加え、秋田県から西仙台変電所(仙台市)までの50万ボルト送電網を整備する。秋田県内では変電所や送電線を新設、山形県内などで既存施設の能力を増強する。

 全発電所のフル稼働を想定した空き容量の算定も見直し、天候などに応じて変動する再生エネなどの発電量を踏まえる方式にする。
 一連の取り組みで送電容量を当初計画280万キロワットの最大1.6倍となる350万〜450万キロワットに広げる。

 工期は11〜13年かかるため、東北電は工事中でも暫定的に再生エネ事業者らの接続を認める方針。完成までは発電量が制御される。

 ただ、秋田県沖などで計画が相次ぎ、参入希望が多い洋上風力は関連する法律がまだ整備されておらず、現段階で事業採算性の見通しは立っていない。

 日本風力発電協会と風力発電推進市町村全国協議会は昨年12月、「既存設備をもっと有効活用すべきだ」と東北電の送電線建設の入札延期を資源エネルギー庁に要請。入札は今年2月から4月以降に延期された。
 東北電の原田宏哉社長は1月の定例記者会見で「送電線利活用や風力発電の扱いを巡る国の議論が続いている。それらを踏まえ適切に対処する」と話した。

[電源接続事業者募集制度]これまで電力大手が担っていた送電網の整備計画を電力広域的運営推進機関が立案し、複数の発電事業者を募って工事費を共同負担する仕組み。2015年の導入以降、東北電力管内では福島県を中心に13地区で募集があり、3地区で成立、3地区で不成立となった。

http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201802/20180209_12001.html