https://jp.reuters.com/article/olympics-2018-ioc-asia-idJPKCN1G30LR

2018年2月19日 / 08:33 / 21時間前更新
Karolos Grohmann Liana B. Baker

[平昌(韓国) 19日 ロイター] - 長期化するロシアのドーピング問題に、汚職疑惑。そして五輪招致に及び腰になる世界の大都市──。

もし国際オリンピック委員会(IOC)が上場企業だったなら、相次ぐ手痛いニュースに飲みこまれて、上場維持が困難になっていたかもしれない。

だが、IOCは財務的にかつてないほど良好な状態にある。これは、アジアでのスポンサーや政府、主要都市やファンの支援拡大によるところが大きい。

IOCの主要な収入源である放映権料収入は記録を更新しており、2016年のリオデジャネイロ五輪では、2012年のロンドン大会から12%増の28億7000万ドル(約3000億円)に達した。2020年の東京大会では、再び記録を更新することが確実だ。

2013─16年のIOC収入の5分の1を占めていた、最高位の企業スポンサーからのスポンサー料は、2014年ソチ冬季五輪と2016年のリオ大会の間に初めて10億ドルを突破した。ソチとリオの両大会は、五輪の中でも最も困難な大会だった。

総費用約500億ドルのソチ大会は、「使いすぎ五輪」の象徴であるだけでなく、今やロシアの組織的ドーピング疑惑の同義語となってしまった。リオ大会は、チケット転売での利ザヤ稼ぎや、五輪幹部を巡る汚職捜査で打撃を受けた。

だが、五輪ブランドを頼みにしている大会幹部たちは、平昌冬季大会での取材に対し、スキャンダルで悩んではいないと話した。選手は問題行動を起こせばたちどころにスポンサーを失う可能性があるが、五輪ブランドは「回復が早い」と、話す幹部もいた。

スポンサー企業側も、消費者は単にそれほど気にしていないと話す。

「(五輪)ブランドにマイナスの傷がついたという証拠はまだ目にしていない」と、最高位のスポンサー企業の1つ、化学大手ダウ・デュポン(DWDP.N)の五輪スポーツソリューション担当のルイス・ベガ副社長は言う。

スポンサー側のこうした発言や潤うIOCの金庫は、相次ぐマイナスの評判や西側都市における五輪招致への関心低下で、五輪ブランドの価値が保てなくなると考える一部専門家の見方と好対照をなしている。

マサチューセッツ州にあるスミス大学の経済学者で、ボストンで五輪招致反対運動のアドバイザーも務めたアンドリュー・ジンバリスト氏は、スポンサー企業はこうしたことを理解しているが、それを認めていないだけだと話す。

「現在の五輪スポンサー企業が、五輪ブランドは揺るがないと言っていること自体に大きな意味はない」と、ジンバリスト氏は言う。「五輪との関係構築に何千万ドルも注ぎ込んだ企業が、IOCのイメージを傷つけるようなことをするだろうか。投資の価値を下げるだけだ」

持続可能な大会実現のための改革案「アジェンダ2020」が策定された後ですら、巨大スペクタクルのために巨額を投入する開催都市側の意思が、IOCのビジネスモデルを支え続けている。

とはいえ、リスクを取る意欲がある都市は減っている。アジェンダ2020の発効後に2024年夏季五輪の開催都市に決まったパリは、約68億ユーロ(約9000億円)の予算を組んでいる。パリが開催都市に決まったのは、ほかに立候補していたボストンやローマ、ハンブルグやブダペストが撤退した後だった。

アジアでは対照的に、五輪招致に手を挙げる都市はまだ多く、IOCやスポンサーを安堵(あんど)させている。

2022年の北京冬季五輪まで、五輪は3大会連続でアジアで開催されることになる。また2026年の冬季五輪には、札幌が招致を目指している。

「アジアは世界に向けて一層開かれようとしており、社会の一部としてのスポーツがその傾向を追っているというのも理屈にかなったことだ」と、IOCのバッハ会長はロイターに語った。
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