ここ数日「女性専用車両」をめぐる議論が、ネット上で盛り上がっている。

 きっかけとしては「女性専用車両から男性を排除することは男性差別である」という趣旨のことを叫ぶ人たちが、女性専用車両に乗り込んでトラブルを起こし、列車運行を遅らせたこと。(*1)
 また、渋谷で女性専用車両に関する街頭演説をしようとした、反女性専用車両の人たちと、彼らが迷惑行為を繰り返すことに反対する人たちが対立したことによるものだ。(*2)

 以前から「男性差別に反対する」という主張を掲げて、女性専用車両に乗り込む活動を繰り返す連中がいた。その活動は「女性専用車両は女性優遇である」と主張するネットのごく一部で支持を受け、長く繰り返されている。

 自分自身は女性専用車両には反対していない。しかしそのネーミングには問題があると考えている。
 実際には女性専用車両にも、子供や障害のある男性など、満員電車に乗ることに不都合がある男性も乗れるとしているのだが「女性専用」というネーミングによりそれを理解していない人も少なくない。

 そもそもかつて「シルバーシート」という名前であった席を「優先席」に変えたのは「シルバーシート=老人専用席」という勘違いが蔓延し、怪我人や障害者、妊婦などが座れなくなってしまったという過去があるからだ。その過去を踏まえれば「女性専用車両」という名称がいかに軽率であったかは明白であろう。せめて「女性"優先"車両」とされるべきであったと、僕は考えている。

 しかし、ネットで女性専用車両が批判されるのは、それが理由ではない。
 ネットなどでは骨折をして松葉杖をついた男性が女性専用車両から追い出されたなどの話題が時折持ち出され、いかに女性専用車両に乗る女性たちが不躾で傲慢であるかを主張する言説が飛び出す。なかには対立を収めようとしているのか、対立を深めようとしているのかよく分からない人が「女性専用車両に乗る女性たちこそ隔離対象である」などと主張する姿もある。

 その根底には無責任なネットによる女性に対する軽視があることは言うまでもない。一方でネットでは無責任な男性への軽視もよくみられる。いわば女性専用車両の問題がそうした無責任なミソジニーとミサンドリーの戦場と化してしまっていると言えよう。

 女性専用車両に立ち入る側の言い分としては、女性専用車両に立ち入ることは、違法ではないということだ。
 たしかに法的に考えれば、女性専用車両に男性が乗り込むことは違法ではない。しかし単純に「とんでもなく迷惑」である。
 Twitterでこの件に関して「電車の中でおならをしまくるのと同じ」という趣旨のツイートがあって、全くそのとおりだと思った。生理現象だからおならが出るのは仕方ないし、おならをする自由は守られるべきだが、それを意図的にしつこくやり続けるのは論外である。

 女性専用車両に男性が立ち入ることが違法ではない一方で、では鉄道各社が女性専用車両を設定することにも問題があるかといえば、そうではないことは、東京地裁の判決で明確に示されており、女性専用車両は決して違法ではない。(*3)
 違法でないなら自由だというなら、鉄道会社が女性専用車両を設けることも違法ではないのだから、自由なのである。

 そもそも、女性専用車両が男性の乗車を許容せざるを得ないのは、男性障害者や怪我人など、満員電車では都合の悪い男性の乗り込みを許容するためでもある。もし、男性健常者の乗り込みを法的に否定し、一方で男性障害者の乗り込みを許可しようとすれば、許可をする障害の規定が必要となる。これでは多用な障害や怪我に対応できなくなってしまう。

 もし、その法を悪用して、男性健常者が「男性差別に反対する」と名乗り、女性たちを怖がらせたり、迷惑をかけるためだけに乗り込み続けるなら、いずれそうした法の抜け穴を埋めるしかなくなってしまうだろう。

 いわば、女性専用車両をその文字通り「女性専用だ。男性が入り込むことはまかりなならん」と解釈して、松葉杖の男性を追い出そうとする女性たちと、法の抜け穴を利用して女性専用車両に乗り込む迷惑行為を続けている男性たちは、どちらも男性の便益を損ねてもかまわないと考えているということで共通しているのである。

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2018年02月25日 11:35
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