血液のがんである「慢性骨髄性白血病」(CML)について、京都大大学院の湊長博(みなと・ながひろ)特命教授(免疫学)らのグループが、マウスから特定の遺伝子を欠如させると、体内でCMLの原因となるがん細胞を攻撃する免疫メカニズムが働くことを突き止めた。2日付の英科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」電子版に掲載された。

 この遺伝子は、過度な細胞の動きを制御する働きがある「SiPA(スパ)1」。ブレーキ役のSiPA1を排除することで、がん細胞を死滅させる免疫細胞「キラーT細胞」が白血病組織内に入り込み、がん細胞を攻撃することが判明した。

 研究では、CMLを発症させるがん細胞を体内に入れた正常なマウスと、SiPA1を欠如させたマウスを観察した。正常マウスはCMLを発症し約40日で全てが死んだが、SiPA1を欠如させたマウスはCMLを発症せず生存した。

 人にもSiPA1と同様の遺伝子があり、湊特命教授は「今回の発見が新たながん免疫療法につながる可能性がある。今後、SiPA1の働きを抑制する方法を探りたい」と話している。

 研究では、CMLの治療薬が効かなくなり再発するといった薬剤耐性の白血病細胞の場合も、SiPA1を欠如させたマウスは発症せず生存した。薬剤耐性の白血病細胞に対しても有効なことが判明したという。


産経WEST 2018.3.2 20:55
http://www.sankei.com/west/news/180302/wst1803020105-n1.html