高齢者に働く場を提供する姫路市シルバー人材センター(兵庫県姫路市中地)で、人手不足が深刻化している。同市では65歳以上の高齢者が年々増加しているが、同センターの会員数は昨年度、ピーク時から千人近くも減少。発注者からの業務依頼を断らざるを得ないケースも出てきている。企業の定年延長や再雇用制度の拡充などが要因とみられるが、同センターは「潜在的な労働力は多いはず。会員獲得に向け、高齢者に社会参加を促していきたい」としている。(三島大一郎)

 「家でじっとしていたらぼけてしまう。今はこの仕事が生きがい」。同センターの事業の一つで、姫路城シルバー観光ガイドを10年以上務める男性(76)が笑顔を見せた。

 学生時代、城の横を通って通学していた。「いつか城に関わる仕事がしたい」と思っていたといい、退職後、同センターに入会。「観光客に満足して帰ってもらうため、日々勉強を重ねている。いろんな人と話ができるし、生活に張りがある」と楽しげだ。

 同センターは1975(昭和50)年12月、「高年者働くしあわせの会」として全国の市町村で4番目に発足。5年後、「シルバー人材センター」に改称した。

 その後、新たな就業機会の開拓と会員の増強に注力。2007年には会員数が3500人を超え、契約金額は17億4千万円に上るなど、全国有数規模のセンターに成長した。

 ところが、会員数は09年にピーク(3758人)を迎えると、翌年から減少に転じた。同センターは「定年を延長したり、再雇用制度を導入したりする企業が増えたことが影響した」と指摘。13年に改正高年齢者雇用安定法が施行され、企業に65歳までの希望者の雇用が義務付けられたことも減少に拍車を掛けた。

 会員数の減少は同センターの運営を直撃した。業務に従事できる人がおらず、依頼を断ったり、発注者との契約を打ち切ったりするケースも出てきた。特に専門的な技術を持った人の入会が減り、将来的に剪定などの業務が回らなくなる可能性もあるという。

 さらに会員の平均年齢が05年は67・9歳だったが、16年は70・8歳まで上がった。「草刈りなど体力のいる業務も人員不足が深刻な状態」と担当者は嘆く。

 危機感を抱いた同センターは近年、会員募集のチラシを配布したり、ポスターを掲示したりするなど情報発信の強化に乗り出した。

 同センターは「会員のベースとなる高齢者は増えている。元気な高齢者に働く気持ちになってもらえるよう、しっかりPRしていきたい」としている。

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 【シルバー人材センター】就職を希望する原則60歳以上の高齢者に働く場を提供する公益社団法人。市町村単位を中心に設置され、自治体や企業、各家庭などから依頼された業務を会員に紹介している。業務内容は清掃や草刈り、駐輪・駐車場の管理、植木の刈り込みやふすまの張り替えなど多岐にわたる。月10日程度、または週20時間程度を目安とし、会員には配分金(報酬)が支払われる。

姫路城でシルバー観光ガイドとして働く男性(右)=姫路市本町
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シルバー人材センターの会員数と平均年齢
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2018/3/3 18:00
神戸新聞NEXT
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