『特集 破局噴火』(日経サイエンス 2015年4月号)より

201X年、今度は大火砕流が地を這う灰色の雲となって九州の山野を呑み込んでいく中継映像を呆然と眺める日がくるかもしれない。
その背後には成層圏にまで達する巨大な噴煙の壁が姿を現していることだろう。

火山学の研究によれば、今から数年後にも巨大噴火が九州で起きる可能性もゼロではない。
もし起きれば最悪の場合、噴火開始後約2時間で九州の大半が火砕流に呑み込まれる。
放出された莫大な量の火山灰は偏西風に乗って東進し、本州と四国、さらには北海道にまで降り注ぐ。
日本列島のほぼ全土が火山灰で埋まる事態になる。

そんな噴火が完全な不意打ちで起これば、被害は東日本大震災の比ではない。
何とか生き残れるのは降灰が比較的少ない北海道と沖縄の人々だけかもしれない。

原子力発電所が火砕流に呑み込まれたり、火山灰に埋まった場合、
どんなことが起こるのかよくわかっていないが、早晩、核燃料を冷却できなくなくなり、
放射性物質が広範囲に飛び散る可能性がある。

噴火の影響は長期かつ広範囲に及ぶ。
灰が降り積もった地域では農地も森林も壊滅、雨が降るたびに各地で大土石流が発生して、地形が変わっていく。
世界各地は異常冷夏となり、農作物に深刻な被害が出ることになる。