3月11日 19時12分
関西大学の永松伸吾教授と九州大学の宮崎毅准教授は大規模災害の復興の在り方を探るため、南海トラフ巨大地震で被災地の復興にかかる費用を試算しました。

南海トラフ巨大地震は、今後30年以内に70%から80%の確率で発生するとされ、国の被害想定では、最悪の場合およそ32万3000人が死亡し238万棟余りの建物が全壊または焼失するおそれがあるとされています。

この想定に基づき、研究グループが、防潮堤の建設や大規模な土地のかさ上げなど東日本大震災と同じような手法で復興を進めた場合にかかる費用を試算したところ、発生から5年で必要になる額は国と自治体合わせて162兆円余りに上るという結果になりました。

これは、東日本大震災の復興予算32兆円のおよそ5倍にあたるほか、平成29年度の国の一般会計予算およそ97兆5000億円をはるかに上回る規模です。

永松教授は「財源の確保が非常に難しく、東日本大震災と同じやり方では財政的に破綻するのは間違いない。ハード面の整備に頼る発想は限界に来ている。津波などのリスクをある程度受け入れる一方で、素早く避難する方法をとるなど新たな復興の在り方を探る必要がある」と話しています。

東日本大震災の被災地では、津波による被害を防ぐため各地で土地のかさ上げ工事が進んでいますが、去年、工事が終わった岩手県大槌町では、現在も空き地が目立ち、利用の予定がある土地は43%にとどまるなど、被災地では空き地の利用をいかに進めていくかが課題となっています。

津波で大きな被害を受けた岩手・宮城・福島県内の、13の市と町の30地区では、津波による被害を防ぐため、土地をかさ上げして宅地の整備が行われていて、すでに4800億円余りが投じられています。

このうち岩手県大槌町では、中心部の町方地区で行われていたかさ上げ工事と宅地の整備が去年11月に終わり、所有者に土地が引き渡されましたが、現在も空き地が目立っています。

大槌町が町方地区の土地の所有者に行った意向調査や、現地調査の結果では、住宅や店舗の建設など利用の予定がある土地は去年7月時点で区画全体の43%にとどまり、残りの57%は「利用の予定がない」か「未定」または、調査への回答が得られていない土地などだということです。

このほか、自治体の意向調査に対して所有者が「土地を利用する予定がある」と答えた割合は、宮城県女川町中心部では去年3月時点で区画全体の49%、岩手県山田町山田地区では去年4月時点で区画全体の51%、岩手県陸前高田市・高田地区で去年9月時点で面積全体の54%となっています。

被災地で空き地の利用をいかに進めるかが課題となる中、大槌町では、土地を売りたい人や買いたい人に情報を提供する「空き地バンク」という取り組みを行っているほか、復興庁も来年度、1億円程度かけ、空き地の活用方法に関する調査や検討を行う方針です。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180311/k10011360731000.html?utm_int=news-new_contents_list-items_003