隠岐諸島・西ノ島にある「隠岐広域連合立隠岐島前病院」(島根県西ノ島町)を研修先に選ぶ医師や見学に訪れる医療系の学生らが年間100人前後にのぼっている。白石吉彦院長(51)が医師確保に結びつけようと「若手集め」に奮闘してきた成果で、離島の小規模病院としては異例の“盛況ぶり”だ。

 松江市か鳥取県境港市からフェリーで約2時間半の西ノ島。この島ひとつからなる西ノ島町の人口は約3千人。高齢化が進み、44%が65歳以上だ。

 研修者や見学者の目当ては、院長が20年前から実践する「医療と介護の連携」事業。在宅患者の状態も把握して適切に処置するため、月に2回、病院と介護の関係者が一つのテーブルについて情報を共有し、対応方針を話し合う。注目が高まる「地域包括ケア」の先駆的取り組みだ。

 「へき地医療の最前線」「島で看護師してみませんか?」。同病院のウェブサイトは、患者よりもむしろ島外の医療関係者向けの仕立てだ。「医師に来てもらうには、まず病院を知ってもらうこと」(院長)。島の生活にも興味を持たれるよう工夫する。

 「1人で背負う離島医療は持続しない。医師が働きたい病院に」。院長自ら年間30回の講演をこなし、発信に努める。その結果、研修先に選ばれたり、医療関係者や学生が見学に訪れたりするケースは平成27年度で99人、28年度で117人に。常勤医の平均年齢も約35歳で、院内は若々しい雰囲気だ。

 主に島根大病院(同県出雲市)で研修を続ける医師の岸本健一さん(26)は昨秋1カ月間、島前病院に滞在した。「他の医療機関がない環境で、対応力を身に付けられると思った」と振り返る。

 島根県全体でも医師充足率は約77%(29年)。地域医療に詳しい城西大経営学部の伊関友伸教授は「離島に医師を集め、病院を維持するだけでも評価されるべきだ」と指摘する。

 西ノ島町健康福祉課の富谷恵子課長は「研修を終えた医師から『患者の生活もひっくるめて1人を診るという姿勢が印象的だった』という感想をよく聞く。病院の在り方そのものが魅力的なのではないか」と話していた。

2018.3.12 07:02
産経ニュース
http://www.sankei.com/region/news/180312/rgn1803120010-n1.html