2010.12.06
漁師とイルカが攻防戦、三浦・松輪のブランド魚「キンメダイ」横取り相次ぐ
http://news.kanaloco.jp/localnews/article/1012060002/
伊豆諸島近海から帰港し、間口漁港に水揚げされるキンメダイ=三浦市松輪地区
伊豆諸島近海のキンメダイをめぐり、漁師とイルカの間で攻防が続く。
船上に釣り上げる前の獲物を、イルカが横取りする漁業被害が相次いでいるためだ。
漁師もあの手この手で対抗し、ことしはイルカの嫌がる超音波発信機も導入。
だが、学習能力の高いイルカに、効き目はいまひとつのようだ。
被害は年々増え、その額は現在、年1千万円以上に上る。
県内でキンメダイ漁を営む漁師は、三浦市を中心に20軒ほど。
遠くは三宅島や八丈島、青ケ島周辺の海域に出掛け操業している。
漁法は底立て縄と呼ばれ、40個ほどの針を付けた縄を500メートルほどの深海に沈め、キンメダイを釣り上げる。
三浦市の松輪地区ではサバに次ぐブランド魚種となっている。
しかし、釣り上げる前の200〜300メートルほどの浅い海域で、虎視眈々(たんたん)と待ち構えるのが、イルカやサメ、バラムツなど。
針に掛かったキンメダイを見つけては、食らいつき、時には漁具ごと食いちぎってしまうという。
特に法令で保護されたイルカは、サメやバラムツと異なり、駆除できないのが悩みの種。
三宅島周辺ではイルカウオッチングが行われるなど、地域の観光資源にもなっている。
県水産技術センターによると、イルカによる被害は10年ほど前から増加傾向にあり、現在は2〜3割ほど水揚げ量を減少させる事態となっている。
対策として10年ほど前から、水中発音弾やごう音を出す機械で威嚇を試みてきたが、効果があるのはおおむね最初の1回のみ。
2回目以降は効き目がなく、イルカが出現した際は漁場を移動し、それでも駄目ならあきらめて撤収するしかないのが現状だ。
往復の燃料代約20万円は、まったくの無駄になってしまう。
そんな中、同センターが今春、投入したのがイタリアの会社製の「イルカ忌避装置」。
イルカが嫌う周波数の超音波を放出する機械で、2機を購入し、漁師に試験実施を依頼した。
装置を試した松輪地区の漁師、加山順一さん(38)は「ことしは夏場の被害がひどく、うちだけで被害額は300万円。
装置の効き目は10回やって1回あるかないかだった」と指摘。
イルカの学習能力にまたも屈する形となった。
東京、神奈川、千葉、静岡の1都3県の漁業者団体は毎年のように水産庁に対策を要望。
同センターも、イルカを寄せ付けない手法の開発を研究機関と共同して進めるよう、水産庁に働き掛けた。
同地区の漁師、鈴木重治さん(57)は「イルカに発信機などは付けられないだろうか。有効な追い払い策がない以上、せめて群れの場所が事前に分かれば、その漁場を避けることもできる」と話した。