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て、無限の欲に奉ずれば不満を感ずる。よつて己は生産せず、天下の多数
の人に生産させて他人を食はんとする。天下に誠の道を唱道して己は誠の
名を売り、且、他人に生産させておいて、己は秘かに食人技術を磨くので
ある。且、誠を行へば生産は当然であるが、過失、偶然、天変、地異、侵
掠等によつて結果が害される事がある。よつて屡々誠意が無に帰する事が
ある。然るに他人の既に生産してしまつた物を狙へば、誠を竭して此より
新に将来、物を作らうといふのでない、既に獲てゐる物である。確で手取
早いと感じ易い。故に此を取らんとする。又欲は物を見れば旺んに刺戟を
うけ衝動を発する。処でかかる人欲を始より明示するならば相手の他人は
驚いて、此は飛んでもない奴である、取られてはたまらぬ、と逃げてしま
ふか、厳重な防備を施してしまふ。相手が逃げてしまひ、又は全然よりつ