http://www.yomiuri.co.jp/economy/20180315-OYT1T50121.html

全国でも珍しい竹ちくわの自動販売機が、兵庫県淡路市浦の東浦バスターミナルに置かれている。

明石海峡大橋の開通(1998年)前にフェリーの船内で人気があった自販機だが、
最後の1台が今なお現役だ。話の種にと、買い求める人も多いという。

ちくわの自販機は、神戸などとの間を結ぶ高速バスなどが発着する同ターミナルの出入り口で、
清涼飲料水の自販機近くに設置。青竹(直径約1センチ)に巻いて焼き上げたちくわをパックして紙箱に入れ、
販売している。「たけやん」の商品名で、1個200円。

もとは、淡路島内外で飲食店経営や食品加工などを手がけるフードサービス会社「ユーアールエー」
(本社・淡路市)が、地元の大磯港と神戸市の須磨港を結ぶ淡路フェリーボートの船内にある売店で売っていたちくわ。
乗客に重宝され、他社から仕入れていたちくわを自社製に切り替えて販売。売店が閉まる夜も「ほしい」と要望が多く、
新船の就航などに合わせて自販機で売ることになった。

ちくわは、タラなど上質の魚のすり身を使い、隠し味にワインを入れてまろやかな口当たりに。
適度な歯応えを楽しめる水分の量や焼き加減を追求して改良を重ねたといい、包装に脱酸素剤を添えて
長く保存できるようにした。

自販機の登場時はテープカットも行われて注目を浴びたが、98年4月の明石海峡大橋開通に伴うフェリーの廃止後、
計10台あった自販機は神戸淡路鳴門自動車道のハイウェイオアシスなどに移された。しかし、夜間営業の売店や
コンビニエンスストアなどの増加で利用者が減少。機械も老朽化し、故障しても代替部品が入手できなくなって
次々に“引退”していった。

東浦バスターミナルに残る1台は、姿を消した自販機の部品を転用して修繕を続けている。かなりの年代物だが、
根強いファンがおり、1か月に約50個が売れる。遠方から買いに来る人もいるという。

同社製造部の井上浩部長は「ちくわを自販機で買うという珍しい体験を、旅の思い出に加えてもらえれば。
できるだけ長く残したい」と話している。