県警、再犯防止へ巡回や助言

 和歌山県警は今月、県や市町村と協力し、万引きで検挙された高齢者に対し、行政機関の窓口を紹介したり、警察官が自宅を訪ねたりする見守り活動を始めた。高齢者による万引きの背景に孤立や貧困があるとみて、地域や行政との関わりを持たせることで再犯防止を目指す。【石川裕士】

■孤立対策、市町と協力

 県警によると、昨年刑法犯で検挙された1941人のうち、65歳以上は503人。このうち万引きは過半数の285人に上った。県警は、容疑者への聞き取りや他県の調査データを基に、身近に話し相手がいない寂しさや、生活困窮が背景にあるとみて対策を取ることにした。

 県警は、万引きで検挙された高齢者に、孤立や貧困が背景にあると考えられた場合、生活保護など公的支援を受けるよう促して担当窓口を紹介するほか、奉仕活動や高齢者団体への参加を念頭に社会との関わりを後押しする。

 一連の刑事手続きが済んだ後には、最寄りの警察署の警察官が巡回連絡の一環として自宅を訪ね、困りごとの相談に乗ったり、要望を聞いたりして生活上のアドバイスを送る。必要があれば関係機関に引き継ぐ。

 県警生活安全企画課の担当者は「高齢者の犯罪では捜査と福祉の連携が求められていたが、公的支援が必要な高齢者の個人情報を行政に伝えるのは難しい。今回のような仕組みを構築することで、警察としても高齢化時代に対応していきたい」と話している。

■65歳以上、刑法犯の5割

 警察庁の統計によると、刑法犯のうち万引きの割合は、65歳以上では5割を超え、少年(20歳未満)と成人(20歳以上65歳未満)のそれぞれ約2割に比べて突出している。

 東京都が昨年3月に公表した報告書によると、万引きした高齢者の約6割に配偶者がおらず、5割弱は1人暮らしだった。家族との会話・連絡が「ほとんどない」とした人は、一般の1・2%に対し、万引きした高齢者では23・5%に達した。

 「話を聞いてくれる人」「生活費を出してくれる人」など身近なサポート役の有無を尋ねたところ、万引きした高齢者は、一般の人に比べて「いない」と回答した割合が各設問で2・6〜18倍だった。

 報告書では「高齢の万引き容疑者の多くは微罪処分、不起訴などで釈放されており、早期復帰が容易な半面、サポートの面が弱い」と指摘。高齢者の孤立を防ぐ取り組みや、店舗での見守りを踏まえた声かけ、関係機関との支援態勢の構築などを提言している。

2018年3月21日 13時28分(最終更新 3月21日 14時41分)
毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20180321/k00/00e/040/278000c