千葉日報 2018年3月21日 22:00 | 無料公開

倉庫から農機具や電動工具がなくなる盗難事件が、茂原やいすみ、君津などの千葉県南部地域を中心に頻発している。
千葉県警によると、昨年からの被害は、届け出がないものを含めると100件を超えるとみられる。
耕運機などを盗んだとして窃盗容疑などで県警に逮捕された男たちは、いずれも中古品買い取り店で換金して生活費に充てていた。
趣味で農業を始める人やDIY(日曜大工)人気の影響で、中古品が高値で売れることが背景にあるようだ。(社会部 伊藤義治)

◆「生活費の足しに」

県警は2月、昨年10月にいすみ市の会社倉庫から溶接機や電動丸のこなど23点(計約75万円相当)を盗んだ疑いで、住所不定の無職男(44)を逮捕。
山武市の農業倉庫からも発電機など6点(計約12万6千円相当)を盗んだ容疑で再逮捕した。
茂原や市原、館山周辺では、倉庫から電動工具などがなくなる盗難事件が昨年から少なくとも約60件発生していた。

また、昨年12月に君津市の農業倉庫から耕運機2台や草刈り機など10点(計約22万円相当)を盗んだ容疑で、茂原市の33歳と25歳の男を逮捕した。
農機具が盗まれる事件は、君津や茂原、千葉などで昨夏から確認されているだけで約20件発生。容疑者の自宅からは盗まれた別の耕運機が見つかっており、関連を調べている。

県警によると、逮捕された3人は、いずれも盗品を中古品買い取り店に売却し「生活費の足しにしていた」と供述している。

◆農業、DIY人気

農機具や電動工具が狙われる背景には、中古品でも値崩れしないことがあるようだ。

県内5店舗で中古の工具や農機具を扱う「寄楽屋」(成田市)によると、移住者や定年退職後のセカンドライフで農業を始める人が農機具をそろえようと、まずは中古品に手を伸ばす。
DIY人気の影響で消費者の目が肥え、性能が劣る安い新品よりも中古品でも大手メーカーの工具を選ぶ傾向があるという。

同社は「新品からあまり値段が下がらなくなった。4〜5万円の小型耕運機はすぐに売れる」と中古品需要の高さを口にする。一方で「4〜5年前から『道具が盗まれた』と、お客さんからよく聞くようになった」と話す。

◆気付きにくく

盗難被害が発生しているのは、農地の一角に設けた農業倉庫や事務所倉庫で、夜になると人の目がなく犯行に気付きにくい場所。
捜査関係者は「鍵がなかったり、鍵を掛けても簡易なものは壊されてしまう。週末だけしか農地に来ない場合は、被害の発覚が遅れる」と、農業倉庫で特に被害が多い理由を語る。

車に積んでいた工具が盗まれる事例も多々あり、管理の徹底が第一だが、限界がある。
盗品がネットオークションに出品されたのを被害者が気付き、取り戻したケースがあり、「保証書を保管したり、製造番号を控えておくことが重要」。県警も業者も口をそろえる。

千葉県南部地域で耕運機など農機具の盗難が頻発している(写真は本文と関係ありません)
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