指定暴力団神戸山口組(本拠地・兵庫県淡路市)から昨年4月に離脱した任侠(にんきょう)山口組(同・尼崎市)が22日に指定暴力団となり、山口組(総本部・神戸市灘区)を合わせ、兵庫県内に「山口組」の名を冠した三つの指定暴力団がある状況となった。指定により不当要求に対する中止命令、抗争時の事務所の使用制限などが可能となるが、それぞれ組織の規模や形態が異なり依然、衝突の危険をはらむ。特に任侠山口組は、他団体と違う方針で急速に勢力を拡大する動きを見せており、兵庫県警が警戒を強める。

 任侠山口組は、指定暴力団としては全国で23団体目、県内では3団体目。

 「月10万円で幹部の直参(直系組長)に登用し、若い組員の取り込みを図っているようだ」。捜査幹部は、他団体と比べた任侠山口組の“特異性”を語る。

 全国最大の指定暴力団である山口組や、そこから2015年8月に分裂した神戸山口組では、組員が直系組長になるには一定の経済力や組織力が必要で、「上納金」は配下組織の規模に応じて高くなるとされる。一方、任侠山口組は配下組員がいなくても月10万円を納めれば直系組長にしているといい、勢力は1都1道2府12県に広がっている。

 県警によると、任侠山口組の構成員は約460人、うち直系組長は約60人。直系組長が54人の山口組(構成員約5200人)、23人の神戸山口組(同約2600人)と比べて際立って多い。山口組や神戸山口組の直系組長に「古参」が多く連なるのに対し、任侠山口組は40〜50代の「若手」が目立つのも特徴だ。

 背景には「分裂」の要因も見え隠れする。15年の分裂は当時、山口組内の中核だった神戸の「山健組」と名古屋の「弘道会」の派閥争いが主因とされた。片や昨春の分裂は世代間対立が引き金とみられ、任侠山口組は記者会見を開き、神戸山口組の古参幹部による組運営を批判した。

 「上に絶対的忠誠を誓う暴力団のシステムが変化してきているのでは」と捜査員。「若手を取り込み拡大を急ぐ任侠山口組自体も一枚岩といえず、組員が暴走しかねない」と危惧する。

 任侠、神戸両組織の争いも続いており、抗争が激化すれば、規制のより厳しい「特定抗争指定暴力団」への指定も視野に入る。

 昨年9月には神戸市長田区で神戸山口組系組員に任侠山口組の代表が襲撃され、組員1人が射殺された。今年3月上旬には尼崎市の路上で、神戸山口組の幹部が何者かにバットのようなもので殴られる事件が起きている。


https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180326-00000001-kobenext-soci