※続きです

「冠動脈疾患とは心筋梗塞や狭心症のことで、当然、動脈硬化によって引き起こされます。
つまり、チメイン族には動脈硬化がほとんどない、ということが分かったのです。
注目すべきは彼らの食生活で、摂取カロリーの構成が、タンパク質14%、脂質14%、炭水化物72%となっている。
チメイン族は米、オオバコ、コーンといった糖質の多い作物を焼畑農業によって得ており、摂取する糖質の割合が高いのです」

ちなみに日本では、総カロリー中の炭水化物の摂取基準値は50〜65%に設定されている。

「このアマゾンのチメイン族に関する論文のハイライトは、糖質制限とは真逆の生活を送る人たちの動脈硬化リスクが低いという事実。
動脈硬化のリスクが低ければ、心筋梗塞や狭心症になりにくく、当然、寿命も長くなります」(同)

■「死亡率1・3倍」の驚愕データ

欧米では、人間を対象にした調査で「糖質制限食を摂り続けると寿命が短くなる」とのデータが出ているという。

「欧米では、糖質制限をしている人と、糖質制限をしていない人をそれぞれ数百人ずつのグループに分け、3年、5年、10年、15年と追跡して、健康状態がどうであったかを確認するという調査が多く行われています。
そして、ほぼどの調査データも、糖質制限を続けた人は寿命が短くなる、という結論になっているのです」(新潟大学名誉教授の岡田正彦氏)

2013年には日本の研究者により、衝撃的なデータも発表された。
研究を行ったのは国立国際医療研究センター病院糖尿病内分泌代謝科の能登洋医長(当時)らで、その結果はアメリカの科学誌「プロスワン」に掲載された。

「この研究は糖質制限食に関する492本の医学論文から動物実験を除き、人間を対象に5〜26年間追跡し、死亡率などを調べた海外の論文を分析したものです。
その分析結果は、“追跡期間中に約1万6000人が死亡していたが、糖質摂取量の最も少ないグループの死亡率は、糖質摂取量の最も多いグループの1・31倍と、統計上で明確な差が出た”というものでした」(先の岡本院長)

死亡率が上がる具体的なメカニズムは完全には解明されていないが、長期に亘って糖質制限を行うと、動脈硬化を招く可能性が高いことは前述した通り。
2年前、糖質制限ダイエットを推奨する第一人者であったノンフィクション作家の桐山秀樹氏が「心不全」により、62歳の若さでこの世を去ったという事実も気になるところである。

「09年には、糖質制限とがん発症の関連性を解明した特筆すべき研究結果が発表されています」
と、岡本院長は言う。

それはアメリカの名門「ジョンズ・ホプキンス大学」のボーゲルシュタイン教授らによる研究で、科学誌「サイエンス」に掲載された。

「ボーゲルシュタイン教授は大腸がんのほぼ全ての遺伝子を発見し、発がんのメカニズムを明らかにした人で、ノーベル賞を取るのではないかと言われている世界的権威です。
その教授が、“低血糖が、がんを発生させる”という結論を導き出した。
この研究が発表されるまでは“がんを封じ込めるには、糖質を制限すべきだ”というのが定説だったので、当然、医学界には衝撃が走りました」(同)

糖質制限の流行で定着した「糖質=悪」という考え方はこの際、きっぱり捨て去ったほうが良さそうだ。

※おわり〆