Bリーグの試合が行われる富山市総合体育館。より大きな施設を求める声も上がる
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北陸3県のアリーナを巡る状況
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富山、石川両県で、スポーツやコンサートを開催できる大規模な屋内施設「アリーナ」を建設する構想が持ち上がっている。

 いずれも地域活性化の起爆剤とするのが狙いだが、福井県にはすでに1万人を収容するサンドーム福井がある。北陸3県に似た施設が乱立すれば、イベントや観客の奪い合いになりかねない。

 ◆イベント誘致期待

 今月1日、北陸新幹線の富山駅から徒歩5分の富山市総合体育館では、プロバスケットボール・Bリーグ1部(B1)の富山グラウジーズ対横浜ビー・コルセアーズの熱戦が繰り広げられていた。5000人の観客を収容できる同体育館には約3000人が詰めかけ、スタンドはグラウジーズのチームカラーの赤色で染まった。

 普段の試合では、チケットの入手は困難ではないが、来年1月に同体育館で開かれるBリーグのオールスター戦はチケットの完売が確実だ。Bリーグには普段から5000人以上を集めるチームもあるためで、ファンからは「大きな大会を開くには客席が足りない」との声が上がる。

 今後もオールスター戦のように多くの集客を見込めるイベントを呼び込もうと、富山県の石井隆一知事はアリーナの新設を検討している。2016年9月に策定した県経済・文化長期ビジョンで、スポーツ振興のため「全天候型の文化スポーツ施設(アリーナ)の整備を目指す」と明記。今年2月の県議会本会議では、採算性や立地条件などの検討結果を年末をメドに取りまとめる考えを明らかにした。

 ◆民間が主導

 石川県では、スポーツや経済関係団体などで作る「(仮称)金沢アリーナ推進協議会」が構想を温めている。スポーツ庁の助成を受けて昨年8月から勉強会を開き、各地の事例研究や収支の試算を重ねてきた。計画は、〈1〉新幹線の金沢駅から500メートル以内に建設〈2〉1万人を収容可能〈3〉2022年度の開業を目指す〈4〉建設費は約70億円――など、より具体的だ。

 ただ、計画に携わる浦建築研究所(金沢市)の浦淳社長は「行政の協力が得られるかが不透明で、費用や開業時期もさらなる精査が必要」と指摘する。

 ◆福井はやきもき

 両県の動きにやきもきしているのが、福井県などが約220億円を投じて1995年に完成した「サンドーム福井」の関係者だ。

 収容人数1万人と、北陸随一の規模を誇る同施設は、有名歌手やアイドルが全国ツアーの際に北陸3県で唯一の会場として公演を行うことが多く、近年もアイドルグループの嵐やHey!Say!JUMP、ロックバンドのB’Zなどがコンサートを行った。

 現在、ドームの管理を請け負っている「県産業会館」によると、16年度の来場者数は56万5000人(前年度比9万人増)と好調だったが、収支は苦しく、県からの補助金5400万円がないと赤字になるのが現状だ。担当者は「金沢にアリーナができれば、コンサートの開催が減り、経営が苦しくなるのではないか」と危惧する。

 共倒れの懸念は富山、石川両県も共有している。石井知事は「近県の状況」も建設の検討材料とする考えだ。浦社長は「近隣で争っても仕方がない。機能を分担して、相乗効果を生み出せるような工夫が必要だ」と話している。(小川洋輔)

2018年04月09日 14時40分
YOMIURI ONLINE
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