【水不足・砂漠化問題】前進する砂漠との戦いに
        敗れつつある中国 

■元々、砂漠地帯に位置する中国 13億もの人口が土地を大きく圧迫している。

 中国は今、戦争状態にある。相手は、領土権を主張する侵略軍ではなく、拡大する砂漠だ。まるで不意に攻撃するゲリラ部隊のように、古い砂漠は前進し、新しい砂漠も生まれている。

中国政府は、様々な面で戦いを余儀なくされている。さらに悪いことに、拡大する砂漠は勢いを増しており、年を追うごとに中国領土に占める割合を拡大している。

 砂漠の拡大は、1950年以降、どの年代でも加速している。中国の国家環境保護総局の発表によると、ゴビ砂漠は1994年から
99年の間に52,400平方キロメートル拡大した。前進するゴビ砂漠は、北京へ240キロメートルに迫り、中国の指導者は事態の重大性を感じ始めている。

 過耕作や過放牧が集中し、歴史的な規模の黄塵地帯を作り出している。中国北部や西部の一部にはほとんど植物が残っていないため、
晩冬や早春の強風は、元に戻るのに何世紀もかかる表土を、まさにたった1日で何百万トンも吹き飛ばしてしまう。

■黄砂問題も引き起こし問題が深刻化

 中国以外の国にとって、中国で生まれつつある砂漠に関心が寄せられるのは、「黄砂あらし」である。例えば、2002年4月12日、
ソウルは中国からの大規模な「黄砂あらし」に飲みこまれた。学校は休校になり、飛行機は欠航し、病院は呼吸困難を起した患者で溢れた。

そして小売販売は落ち込んだ。韓国人は、今や「第五の季節」と呼ぶ、晩冬から早春の「黄砂あらし」の到来を恐れるようになっている。

日本もまた、中国からの「黄砂あらし」に苦しんでいる。韓国ほど直接砂塵を浴びるわけではないが、日本人はフロントガラスや窓に筋をつける砂塵と茶色い雨に不満を漏らす。

 毎年、北京や天津など中国東部の都市の住民は、「黄砂あらし」が始まると身を潜める。呼吸困難や目に入る砂塵もさることながら、人々は家に砂塵を入れないため、また、出入り口や歩道の砂塵や砂を取り除くために絶え間なく働き続ける。

砂塵で農地は埋まり、放牧された家畜が死んでしまい、生計手段を失った農民や牧畜民は、もっと大きな犠牲を払っている。

 アメリカ大使館員が内蒙古自治区シリンゴルを訪問後、2001年5月に出した報告書は、シリンゴルの97パーセントは当局の発表では草地と分類されているが、3分の1は砂漠のようだと指摘している。

同報告書によると、シリンゴルの家畜の数は、つい1977年には200万頭だったが、2000年には1,800万頭に増加した。
シリンゴルで草地の研究を行っている中国の科学者は、もし最近の砂漠化傾向が続けば、15年以内にシリンゴルには住めなくなるだろうと話す。

 最新のアメリカ大使館の報告書によると、衛星画像は、中国北中部の2つの砂漠が拡大し、内蒙古自治区と甘粛省にまたがる1つの大きな砂漠を形成しようとしていることを示している。

新疆ウイグル自治区の西では、タクラマカン砂漠とクムタグ砂漠という2つのさらに大きな砂漠も、また1つにつながろうとしている。その砂漠近くの主要道路は、恒常的に砂丘に覆われる。

 中国は、世界経済と地球の生態系との悪化する関係の最前線にある。