京都府内で山岳遭難事故が急増している。

 事案を取りまとめる府警機動警ら課によると、昨年の発生件数(府警による認知件数)は前年の3倍以上、過去10年で最多の46件(56人)に上った。登山の専門家は、京都市近郊の比較的低い山に潜む特有の危険性を指摘。多発する遭難の背景や対策を探った。

 好天に恵まれた3月31日、京都市左京区の大文字山(466メートル)の山頂近くは20人近い登山客でにぎわっていた。五山の送り火で「大」の文字のかがり火がたかれる火床周辺は樹木がなく、絶好の眺望スポットだ。

 眼下には桜が咲き誇る哲学の道周辺(左京区)、緑に覆われた京都御苑(京都市上京区)などが広がる。大学進学で千葉県から京都市に引っ越してきたばかりという女性(18)は「ちょっと登っただけで、京都が一望できる。いい思い出になった」と笑顔を見せた。

 大文字山は、銀閣寺近くの登山口から火床まで約30分、山頂へも約1時間足らずという気軽さで人気を集める。市街地と変わらない軽装の人も目立ち、夏場には夜景を目当てにナイトハイクをする人も多い。その一方で、昨年は府内最多の10件と遭難が多発する山でもある。「蜂が飛んでいた」「同じルートに飽きてきた」など、ささいな理由で主要なルートを外れ、道に迷うことが多いという。

 同課によれば、府内の遭難場所の9割が京都市近郊に集中。大文字山を筆頭に愛宕山(924メートル)が4件、貴船山(700メートル)と小倉山(296メートル)各3件などで、府山岳連盟は「低山は枝道が多く、高山よりもかえって道に迷いやすいのが特徴だ」と指摘する。

 遭難した56人のうち、年齢別では60代以上の高齢者が6割以上を占める。全体の原因別では「道に迷った」が最多の34人、「転倒」が7人、「疲労」「滑落」が各5人と続く。府警のヘリコプターでの捜索・救助は約50回(山岳遭難以外も含む)に上っている。

 4人の死者も出た。トレイルランのために入山し、昨年7月30日に行方不明になった大阪市の無職男性(当時68歳)は、6日後に小倉山中で遺体で見つかった。右京署によると、コースから数百メートル離れた崖下で発見され、近くには滑落した痕跡もあったという。

 今年に入っても府内で12件が発生し、2人が死亡している(13日現在)。同課は「低い山だからと地図や登山用の装備を持たない人がいる。身近な山でこれだけの遭難者が出ていることを知ってほしい」と警鐘を鳴らす。(吉田雄人)

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